飲食店の上手な開業方法についてまとめてみました。
このような方へ、飲食店開業の実現性やスピードを高める5つの方法を紹介
それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
本記事の内容
飲食業で独立開業!この夢をグッと近付けるための5つの方法
この記事を書く私は、コンサルタントとして20年のキャリア、その後、事業会社で役員をしています。新規事業立ち上げの責任者として、飲食事業の立ち上げにも関わりました。
それでは、はじめて参りましょう!
飲食業で独立開業するには
・新規開業する
・居抜き店舗を買う
・間借り営業する
・M&A(企業買収)をする
・フランチャイズに加盟する
・独立支援(のれん分け)を受ける
これで以上です。それぞれ、解説していきますね。
新規開業
店舗、メニュー開発、人の採用、全てゼロから自分で始める方法。
大半の開業は、このスタイルでしょうか。
今回の記事の主旨から外れるので、解説は割愛しますね。
居抜き店舗を買う
居抜き店舗とは、前のお店の厨房機器やテーブルや椅子、照明器具などを、そのまま譲り受けることです。
居抜き店舗を使って開業できれば、時間もコストも大幅削減できます。
設備や家具の譲り受けは、「有料」「無料」いずれのケースもあります。
・有料の場合・・・家主さんとの店舗賃貸契約とは別に、お店の元のオーナーから買い取ります
・無料の場合・・・家主さんと交わす店舗の賃貸契約の中に含まれます
お店の元オーナーからも、稀に無料で譲り受けるケースもあり、まちまちです。
店舗の撤去・処分には、実はかなりのお金、100万円程度の費用がかかり、お店のオーナー負担となります。
したがって、安くても、あるいは最悪無料でも、売ってしまった方が、撤去費用がかからず、お得なのです。
ここでは一応、機器や家具を買う事を想定して記事を書きます。
居抜き店舗を買う流れ
居抜き店舗マッチングサイトより買取申し込み
↓
店舗の内覧
↓
買取条件の交渉、家主さんへ賃貸申込
↓
契約(買取契約・賃貸契約)、買取金額や家賃の振込み
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店舗引継ぎ
居抜き店舗の紹介が多いマッチングサイト
予算感、新規開業との比較
「東京都内でラーメン店(20坪)を開業する」ケースで比較します。
■新規開業の場合
・内装工事費用 500万円
・厨房設備費用 300万円
計 800万円
*あくまで概算予算です
■居抜き店舗を買い取った場合
・買取価格 300万円
こちらは実際に「店舗そのままオークション」で売られていた17坪のラーメン店の、居抜き店舗設備(厨房や空調、カウンターやテーブル席など)の売却希望価格です。(ただし千葉市内の店舗)
こちら開店から1年、現在も営業中の物件が、通常の新規開業コストと比べ半額以下です。
300万円出して看板を付け替えれば、今の店が退店した翌月から営業を始められるのです。
かなりお得ですよね。
居抜き物件の注意点
■設備が劣化している
業歴の長い飲食店なら、厨房設備や空調設備が劣化しているのは想定できます。
故障していて全く動かないなら、話は分かりやすいのですが、問題は性能劣化しているケースです。
春に買い取った時には分からなかったけど、暑い夏になるとクーラーが全く効かなかったなんてことも。
最悪なのは1年後に壊れてしまこと。買取費用に加え、設備の新設費用、必要のなかった撤去費用と、三重にお金がかかる場合があり大損害を被ります。
安易に安いと判断せず、注意が必要です。
工事業者に知り合いや友人がいるなら、内見の時に一緒に見てもらってアドバイスを受けるのが賢明です。
■とはいえ閉店する店
居抜き店舗とは、いずれも退店のために売りに出されている店舗。
退店の事情は、それぞれあるでしょうけど、言ってしまえば、お店の経営が上手くいかなくなったということ。繁盛店なら、後で紹介しているM&Aで売却するはずです。
「あのテナントは、いつも長続きしない」
そんなお店が、皆さんの周りにもありませんか?
なぜ、その店で経営が上手くいかなかったのか、いま一度冷静な目で分析してみてください。
間借り営業する
間借り営業とは、飲食店を始めたい開業希望者が、既存の飲食店の空き時間を利用して開業する方法です。
シェアレストランやゴーストレストランなんて呼び方もされています。
店舗の空き時間帯を有効に活用して副収入を得たい飲食店オーナーと、飲食店を始めたい開業希望者のニーズをつなぐ、営業のやり方です。
新規開業に向けての試金石として、「ここからステップアップしたい」と考える人には、間借り営業はピッタリです。
こちらも居抜き店舗と同様、インターネット上にマッチングサイトがあります。

間借り営業を始めるまでの流れ
間借り営業マッチングサイトに登録
↓
プロフィール登録(審査あり)
↓
間借りスペースの内覧・顔合わせ
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間借りスペースの決定・利用料支払い
↓
営業開始
間借りできる飲食店を紹介してくれるマッチングサービス
予算感、新規開業との比較
先程と同じく都内ラーメン店の新規開業を行った時の初期費用のシミュレーションです。
■新規開業の場合
物件費用
礼金・仲介手数料 600,000円
保証金 1,800,000円
工事費用
内装工事 5,000,000円 厨房・空調・テーブル等
製麺設備 3,000,000円
食器、家具、備品等 600,000円
合計 11,000,000円
運転資金や材料費は、これとは別にかかります。
間借り営業と対比するための項目のみを抜き出しました。
■間借り営業の場合
間借り利用料 140,000円/月(光熱費込み)
「軒先レストラン」では、東京都江戸川区のカジュアルダイニングバーが紹介されており、ラーメン店の営業可となっていました。
- 50㎡ JR小岩井駅より徒歩3分の立地
- 利用可能時間 9:00~16:00
- 間借り可能業態:昼呑み、カレー、ラーメン、定食、ランチ
- 利用期間:1ヶ月更新
ランチ営業になりますが、1000万円くらいかかる開業資金は、このケースなら厨房機器を一部自分で用意しなければいけないでしょうが、初期ほぼ0円で、いきなり営業を始めることが出来る訳です。
間借り営業の注意点
■もしもの時の責任の所在
例えば、食中毒が出た場合、それが貸主側から出ようが、間借りした側から出ようが、連帯責任で2店舗とも営業停止となります。
間借り側は問題があれば退去で済む話。一方、貸主のリスクは大きいので、トラブルによっては損害賠償なんてこともあります。
■ストレスがかかる
厨房機器やお皿やコップ、備品類を破壊、破損させないか、借り手は、思いのほかストレスがかかるでしょう。
どちらが悪いか、はっきりしない場合なら、往々にして借りている側が疑われてやむなしの所があります。
■契約は貸主が有利
間借り営業は、まだまだ市民権を得ているサービスでありません。契約内容は充分に確認しておくべきです。
軒先レストラン スペース利用約款
https://business.nokisaki.com/pages/userules
当然ではありますが貸主が有利な契約内容になっています。継続して利用できるかどうかは、貸主側の考えによります。借りる側が継続したいと思っても、NOが出ればそこまでです。
■あくまで新規開業への試金石
間借り営業は新規開業に向けての試金石。
もちろん金銭は払いますが、あくまで貸主の好意に甘え、「場所を借りてウデを磨く」というのが、本来の考え方です。
したがって、「間借り形態で営業するのが本業」になってしまうのは本末転倒というものです。
M&A(企業買収)をする
M&Aとは企業買収のこと。
営業中の飲食店を買い取ることです。
買い取り方には、会社そのものを買い取る方法(株式譲渡)と、営業権を買い取る方法(事業譲渡)の2種類があります。
ここまでご紹介した「居抜き店舗」と「間借り営業」とは、M&Aは、働くスタッフや店の看板、メニューも含め買い取ることが、大きな違いになります。
店の看板、スタッフがそのままなら、お客さんから見ると、「何も変わっていない」ように見えます。
「M&Aは大きな会社がすること」とお考えの方も多いでしょう。
でも最近は、小企業も飲食店もM&Aをする時代になりました。
M&Aから開業までの流れ
飲食店のM&Aの多くは、インターネット上で成立しています。
M&Aマッチングサイトへの登録(無料)
↓
気になる売り案件へ情報開示・条件交渉の申込
↓
売り手が交渉相手を決める
↓
売手と買手の顔合わせ
↓
M&A条件(価格や時期、従業員の雇用等)の詳細検討
↓
M&A成立(買収代金・手数料の払い込み)
M&Aをインターネット上で仲介する会社
- 登録無料。個人利用も可能。日本最大級のM&Aマッチングサービス。小規模な店舗や企業が多いのが特徴で、飲食店も多数掲載されています。
- 登録無料。利用は法人のみ。TVCMでお馴染みのビズリーチもM&Aサービスをしています。法人限定だけあり、トランビと比べて、やや大きめの案件が中心になりますが、1店舗や2店舗の飲食店での多く掲載されています。
M&Aで引き継げる資産とは
・地域での知名度や評判
・利用するお客さん
・メニュー
・従業員やスタッフ
・仕入先
新規開業した時に相当な時間と手間がかかることを、すぐに「お金で手に入れる」のがM&Aの魅力です。
M&Aのデメリット
■大きなお金がかかる
「居抜き物件」「間借り営業」はもちろん、イチからの「新規開業」と比較しても、大きなお金がかかることが1つ目のデメリットです。
新規開業立ち上げ当初の赤字、毎月お金を持ち出すことになるでしょうから、M&Aはその分を始めに出しておくという考え方もできます。
■資産が負債にもなる
資産と思って引き継いだ地域での評判やスタッフが、場合によってはマイナスにしかならないという事も充分に考えられます。
M&Aとは形の見えにくいものも含めて売買する行為、店舗のテナントを借りる以上に失敗リスクが大きいです。
■本来引き継ぎたいものが引き継げない
飲食業のM&Aで最も懸念されるのは、オーナーにノウハウや顧客が付いていること。
オーナーが変われば味がおちてしまい、固定客が離れてしまっては、元も子もありません。
予算感、新規開業との比較
先程と同じくラーメン店の新規開業を都内で行った時の開業費用と当初の運転資金(赤字部分を補填する金額)を含め、M&Aと比較しました。
■新規開業の場合
物件費用
礼金・仲介手数料 600,000円
保証金 1,800,000円
工事費用
内装工事 5,000,000円
製麺設備 3,000,000円
食器、家具、備品等 600,000円
初期運転資金
・家賃(6ヶ月分) 1,800,000円
・材料費(6ヶ月分) 1,000,000円
・水道光熱費(6ヶ月分)600,000円
・人件費(6ヶ月分) 3,000,000円
合計 17,400,000円
運転資金はあくまで概算です。
これ以外に広告費や保険料なども必要かも。
もちろん早期に黒字化すれば、運転資金はこれほど必要ではなくなります。
■同規模のラーメン店をM&Aした場合
・売却希望価格 3,000万円
・M&A手数料 90万円
合計 3,090万円
先程ご紹介したトランビに、「山手線沿線の人気ラーメン店・(食べログ3.7以上)」が売りに出ていました
事業譲渡になるので、上記とは別に家主さんとの賃貸借契約が必要です。
利益は「やや黒字」、従業員は5名継続雇用が見込まれるとのことです。
人気ラーメン店との事ですが、3,000万円は、「やや高い」ですかね。ただし経営をテコ入れして年間1,000万円以上の利益が見込まれるのでは、アリかもしれません。
デメリットの所にも書いていますが、このあたりの事業性の評価がM&Aの難しい所ではあります。
M&Aについての関連記事
https://kotobuki.blog/964/
フランチャイズに加盟する
飲食業のフランチャイズは実に多くあります。
日本フランチャイズチェーン協会に加盟する全FC本部1,328社のうち、飲食業のフランチャイズは568社と全体の40%以上を占めています。
飲食業のフランチャイズに加盟すると、本部のノウハウや味、メニュー開発力を利用することができること、長年築いた本部の信用力やブランド力を利用することが出来る事がメリットです。
フランチャイズで開業するまでの流れ
フランチャイズ情報を収集する
↓
加盟フランチャイズを決定、契約をする(加盟金等が発生)
↓
開業する場所を決める。内装工事を始める
↓
本部の研修を受ける等、開業準備
↓
開業
フランチャイズ情報を集めるには
- フランチャイズショーは日本最大級の展示会、毎年1回東京で3月頃に開催されます。(2020年はコロナウィルスのため中止)
自分の目で確認、研究をするにはフランチャイズショー並びに展示会への参加が一番です。
- マイナビ独立でも多くの飲食店のフランチャイズ情報が掲載されています。現在、16件のフランチャイズ本部の情報が掲載中。詳しい情報は掲載されていますが、更に詳しく知りたい場合は、「説明会に参加」や「個別で話を聞く」が次のステップとなります。
- フランチャイズの窓口では、なんと200件以上の飲食・菓子系のフランチャイズが確認できました。詳しい資料の取得には会員登録(無料)が必要です。
フランチャイズ系の情報サイトは、掲載にそれぞれ特色があるので、全てのサイトをチェックしても損は無いです。フランチャイズ比較ネットでも気になる飲食店情報が見つかるかも。
予算感、新規開業との比較
フランチャイズ本部や契約内容により、かかる費用はマチマチです。
定食屋の「やよい軒」が、黒字の直営店を引き継ぐフランチャイズ制度を募集しています。
引き継ぐ対象は既存の直営店、しかも売上が1億円以上ある店舗のみ。店舗の設備什器はもちろん、スタッフまで引継ぎ対象です。
■「やよい軒」に加盟した場合の初期費用
・加盟金 5,000,000円
・保証金 2,000,000円
・研修費 400,000円
・仕入代金他 800,000円
・自己資金 4,000,000円
合計 12,200,000円
通常、やよい軒の業態を新規で開業すれば、1億円近い初期費用がかかりそう。
既存店舗の引継ぎとはいえ、この契約モデルは検討の価値ありです。
詳しくは、マイナビ独立で紹介さているので、そちらを確認下さい。
フランチャイズ加盟の注意点
フランチャイズは玉石混合、「ピンからキリまで」です。
■本部自体の経営が安定していない
飲食業フランチャイズの特徴は、実績の乏しい企業が多いこと。
直営数店舗で成功したラーメン店がフランチャイズを始めたり。
でも、美味しいラーメンを作ることと、フランチャイズの経営は全く別の話。
フランチャイズ本部の経営が破綻すれば、その加盟店も露頭に迷うこととなります。
■説明資料はウソや希望的観測が多い
当たり前ですが、フランチャイズは「儲かります」と言って、お薦めしてきます。
しかし、5年以内に30%が廃業する厳しい飲食業界。
必ず儲かるなんて保証はどこにもありません。
特に本部が用意する売上や利益のシミュレーション資料は希望的観測でつくられた資料が多く、その数字をあてに資金を用意すると、立ち上げ当初から資金不足になんて事も。
絶対注意です。
本部の言う事を鵜呑みにしないでください。
独立支援(のれん分け)を受ける
独立支援とは、何年間かそのお店で社員として働き、その後にお店の看板を貰って独立する制度です。
昔の飲食業、特に和食や寿司のような伝統的な日本料理のお店では、若い板前さんが丁稚奉公に入り、経験を積んだうえで独立する風習があり、それを「のれん分け」と呼んでいます。
最近は全国展開するチェーン店でも、のれん分け・独立支援制度を行う飲食店があり、将来、自分のお店を持ちたいと考える若者に人気です。
日本最大規模の転職サイト「リクナビNEXT」でも、「飲食業」「独立支援制度」で検索すると、72件がヒットしました。直接、登録・確認してみてください。
まとめ
いかがだったでしょう。
最短・最安で飲食店を独立開業する方法。
それぞれ特徴があり、メリットもデメリットももちろんあるので、よく研究の上、判断してください。
この記事で紹介した方法を提供しているインターネットサービスを改めて、ご紹介して今回は終わります。
居抜き店舗を探す
間借り営業できる店を探す
飲食店をM&Aする
・トランビ
フランチャイズに加盟する
独立支援制度のある企業へ転職する
今回はここまでです。
お読みいただき、ありがとうございました。