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業界研究

【考察】新聞社の生き残り戦略

新聞をやめて、およそ5年が経つ。
5年前は家計がひっ迫していた時で、妻と話しあって、確か保険の見直しと一緒に新聞をやめた。
その後は持ち直したけど、特に必要性を感じないので、やめたままとなっている。
ネットに溢れる無料のニュースが代わりになった。

10年で発行部数40%減少

私のように考える方は実際多いようで、日本新聞協会によると、2023年の新聞発行部数は28,590,486部。2013年のそれが46,999,468部ということなので、わずか10年の間に約40%も減少した。これに代わるものとして有料の電子版があるが、どこも焼け石に水っぽい。朝日新聞が公表した2023年9月のデータによると、同社の朝刊発行部数357万部に対し、朝日新聞デジタルの有料会員数が30万人、デジタル分野は主力事業に育っていない。
もはや経営は新聞一本では立ち行かず、東京銀座朝日ビルディングや大阪ツインタワーを有する朝日新聞社は、有価証券報告書の中で「不動産事業が収益の柱」と堂々と宣言する。2023年3月期の同社の決算では、不動産事業により66億円の営業利益を稼ぐ一方で、メディア事業は70億円のマイナス、トータル4億1,900万円の営業赤字となった。不動産を収益の柱と呼ぶのも頷ける内容で、先人が残した資産(不動産)で食いつないでいる状態。これは朝日新聞に限らず、どこの新聞社も似たようなものだろう。

朝日新聞社のセグメント別損益(2023年3月期)

メディア事業 不動産事業
売上高 2,299億円 383億円
営業利益 △70億円 66億円

 

これらの数字をもとに新聞社経営に関する現状認識をしてみよう。
メディア事業の売上2,299億円を、朝刊発行部数にデジタル会員数をたした387万の読者数で割ると、1読者当り年間売上59,406円(月4,950円)になる。
材料費と印刷費を変動費(限界利益率76%)とした場合、朝日新聞のメディア事業が赤字脱却するには少なくとも、15万5,000組の新規読者開拓(プランA)か、既存読者から1人当り年間2,380円を余分に稼ぐ(プランB)か、ABの合わせ技(プランC)かの必要がありそうだ。

  • プランA:(59,406円×15万5,000組)×76%=約70億円
  • プランB:(2,380円×387万組)×76%=約70億円

 

新聞社が赤字にならないためには、今より5%程度購読者を増やすか、同じく5%程度客単価を上げるか、いずれかに取り組む必要がある。
これは難易度が高いというレベルの話ではなく、むしろ真逆の力がかかっており、現実は無料のインターネットメディアに取って代わられ、購読者数は毎年減る一方だからだ。
インターネットメディアにも不満はあるが、日常生活を送る上では特に困ることはないし、どうしても新聞が必要であれば、必要な箇所だけ、必要な時に購入すれば済む話と割り切れる。
新聞社の生き残り戦略を考えてみたい。

新聞社の生き残り戦略の方向性

アンゾフの成長マトリクスで考えてみる。

新聞社が主に取る戦略は「新市場開拓戦略」と「多角化戦略」と思われる。

新聞購読者は高齢者層が中心だ。新聞の年代別利用者率は、60代以上の55.1%に対し、20代が2.6%、30代が5.9%と大きく違う。50代でさえ33.8%と60代に遠く及ばない。
これを未開拓の市場が広がるとポジティブにとらえるのか、既に見捨てられているととらえるのか、新聞社の「新市場開拓戦略」をみると、むしろ後者と悲観しているようだ。新聞社の広告を見ると40~50代をターゲットにマーケティングを展開しているように思われるのは、未開拓市場を前にした諦めの境地なのか。

新市場開拓の武器は有料デジタル会員となるが、競合ひしめく領域、しかも無料サービスが幅を利かせる領域で苦戦しかない。デジタル会員数が伸びず、新聞が赤字事業へ転落している。

「多角化戦略」は、成功と言えば成功している。
都心の不動産は価値が高く、新聞事業の赤字を補填するには充分だ。しかしこれ以上に、読者離れが進み、赤字額が膨らめば補填しきれなくなってくる。
そもそも不動産事業が収益の柱であるなら、果たして新聞社と呼ぶべきなのか疑問が残る。
既存市場を既存商品で深耕する。

「市場浸透戦略」は無理がある。高齢者の新聞購読率50%超は驚異的な数字で、これを伸ばすことはNHK紅白歌合戦が視聴率を取り戻すのと同様に難易度が高い。他紙と購読者の奪い合いは考えにくい。

「新商品開発戦略」はどうか?
既存市場に新商品を提供する新商品開発戦略は、絵画展などイベント事業はファン感謝祭的な位置づけで、そこに儲けの匂いはしない。しかし新聞社へのロイヤリティが高く、可処分所得の高い高齢者に対し、可能性は感じる方向である。

このブログでは、新聞社の生き残りについて、新規事業により活路を見出すとすれば、どのような取り組みが良いか、勝手に私見を書いてみたい。

私の考える新聞社のミッション

新聞社が不動産事業に苦肉の策で取り組むことに理解は出来るが、モヤモヤが残る。
なぜか?そこには、ミッション(使命感)がないからだ。

新聞社のミッションはジャーナリズムの発揮だ。
ビル・コヴァッチ&トム・ローゼンスティール著『ジャーナリズムの原則』によれば、ジャーナリズムの一番の目的は、市民が自由を守り、自治を行うために必要な情報を提供することらしい。
私がこれを拡大解釈するなら「情報の力でより良い社会を作る」ことになる。
新聞社の新規事業なら、より良い社会を作ることに経営リソースをつぎ込む、ここから逸脱されるとモヤモヤする。

6つの社会課題分野

より良い社会へ、問題点を考えてみたい。
三菱総研のレポート「社会課題リスト」では、「100億人が100歳まで豊かに暮らせる持続可能な社会」の実現に向け6つの社会課題分野を設定しているので、これを参考にした。

6つの社会課題

  • ウェルネス/すべての人が健康で生き生きと輝く社会
  •  水・食料/すべての人に安全・安心な食料が行きわたる社会
  •  エネルギー・環境/すべての人がクリーンで持続可能なエネルギーを使える社会
  •  モビリティ/すべての人がクリーンで自由・安全に移動できる社会
  •  防災・インフラ/すべての人が安全で安心して生活できる災害に強い社会
  •  教育・人財育成/すべての人が社会に貢献する力を得られる社会

レポートは更に細分化していて、例えば1番のウェルネスは次の通り。

ウェルネス分野の課題

  1. 生活習慣病による医療費の増大:予防と重症化防止の技術向上、対策強化
  2.  介護人材の不足が深刻化:質と生産性を兼ね備える「科学的介護」の拡大
  3. 医療サービスへのアクセスが不充分:地域に制約されないサービスと品質の提供
  4. 孤独・孤立による弊害の深刻化:予備軍の早期発見・予防策実施と弊害の軽減
  5. メンタルヘルスを損なう人の増大:予防から治療・社会復帰までのサポート
  6. 女性の健康リスクが増大:製品と社会制度の両面で女性の健康に配慮
  7. パンデミックの頻発・深刻化:予防・拡大防止、社会のレジリエンス向上

課題の内容については議論あるだろうが、あくまでイメージを膨らませて頂くためのツールとしてご容赦いただきたい。

社会課題リストの中から新規事業候補として選んだもの

この「社会課題リスト」から、私はウェルネスの④番「孤独・孤立による弊害の深刻化」を解決する事業候補として「CCRC」を選んだ。

選んだ理由は単純で、自分が所属する会社の新規事業として研究した事があり、文章が書きやすいからだ。
そして結局のところ会社でCCRCに取り組むことはなかったが、その理由も単純で、CCRCに儲けの匂いがしないからだ。
所詮、その程度のものなので、この候補に特別な意味がないことをご容赦いただきたい。

CCRCは定年退職後の高齢者が、必要に応じて介護・医療などのケアサービスを受けながら、主に地方で持続的に共同生活するContinuing Care Retirement Communityの略語だ。
健康な段階から共同生活を始め、地域活動や経済活動にも参加する。
CCRCの国内事例として知られる「シェア金沢」は、サービス付き高齢者向け住宅32戸(家賃95,000円~135,000円/月)と、天然温泉、レストラン、店舗、ライフハウス、グランド、児童入所施設、学生寮、幼稚園などが総面積11,000坪の敷地の中に集まっている。入居高齢者は、施設の中で仕事を得ることも、ボランティアやコミュニティ活動をすることも可能。介護が必要な入居者には、もちろん医療や介護サービスが提供される。

事業選択の視点

複数候補の中から新規事業候補を選ぶなら、次の4つの視点が必要だろう。

視点①:本業の強みが活かせる分野
視点②:本業とのシナジーが期待できる分野
視点③:課題解決がもたらすインパクト(予想される新事業の規模感)
視点④:排他的な競争優位性を保持できる分野

私の考える新聞社の強みは次の3点。

  • 中高年層を中心としたロイヤルカスタマーの存在
  • 受け継がれてきた自前ジャーナリズムへの信頼感
  • 電話一本でキーマンと会える政財界、行政、市民とのパイプ

CCRCなら、いずれの強みも活きそうだ。
中高年読者に関係の深い「ウェルネス分野」への参入は理にかなっている。
CCRCで移住を伴うライフスタイルの転換を求めるには、長期間にわたる顧客とのコミュニケーションが必要だ。現場取材をベースに公正公平な立場から情報発信するジャーナリズムの姿勢は、顧客との信頼構築に役立つ。都道府県に事務所を構え、各地の政財界や行政とパイプを持つ新聞社は稀有な存在だ。地域でコミュニティを開発するなら、何よりパイプが重要だ。

シナジーが、今回強く訴えたい点だ。
新規事業への取り組みにより、読者離れを食い止め、あわよくば売上拡大に貢献、更にはジャーナリズムが、これまでとは違った形で発揮される。
この点については、後ほど詳しく検討してみたい。

課題解決がもたらすインパクトを算定するのは難しい。
孤独による心身への影響は、死亡リスクを26%、認知症発症確率を64%、脳卒中発症リスクを32%増加させるという。
英国では、孤独によるコストを年間25億ポンド(約4,500億円)と算出した。
英国の人口は日本の約半分なので単純計算すれば日本のインパクトは約9,000億円となる。
新聞社は大企業だ。新規事業が会社全体の収益改善につながらないと意味がないし、ニッチ領域では新聞読者の関心も引きにくい。

新聞社が排他的に競争優位性を保持できるのは間違いない。
CCRCには巨額の投資が必要となるが、朝日新聞社の内部留保3,643億円が示すように心配ない。中高年を中心に顧客を抱える優位性もある。

これらの事を考えると、CCRCは新聞社の新規事業として、それほど悪くはない。

新聞の役割を再構築する

新聞が新規事業に貢献する役割を2つ考えた。
一つは新規事業の情報発信機能、もう一つは見込み客の囲い込みだ。
新聞紙面に社会課題や事業に関する情報を毎日掲載する。朝刊が仮に30ページだとすれば、4~6ページ分くらいはそれに割きたい。
全体の15~20%の紙面をウェルネスのような特定テーマが毎日占めるとなると、新聞のイメージもかなり変わってくるし、場合によっては読者離れが一層に加速するだろう。
でも、読者や新聞の役割を1から再構築するくらいの決意がないと、新聞社の経営再建は覚束ないと思う。
発信する内容は、事業に関するありとあらゆる全てになるだろう。
社会課題に関する日々の出来事や事件、論説、調査報道もあれば、新規事業に関するプレスリリース、商品プレゼンテーション、さらには事業内部の情報、社会会議の議事録や収支報告など、ありとあらゆる情報を開示したい。
情報開示といえば堅苦しいが、楽屋裏の成功も失敗も包み隠さずオープンにして、読者と共に社会課題について考え、解決していくイメージだ。

読者が支える新規事業

読者と情報を共有して、新規事業の運営を一緒にやっていく。
事業運営に参加する読者を会員組織化する。

DAO(ダオ)という考え方がある。分散型自律組織の略で、中央集権的な管理者を持たない組織を指す。ブロックチェーンを用いて、参加者全員が組織の決定に参加できる組織体をいう。読者会員のイメージはDAOに近い。

会員は新聞購読料とは別に毎月の会費を払う。
会員は新聞社へロイヤリティが高く、お金に余裕があり、課題に関心の高いメンバーが中心となるだろうし、もちろん50代以上が多くなるだろう。
会員は組織の一員として事業運営に参加する。
リモート会議に出席するばかりか、意思決定の際には投票権を持つ。新サービスの提案や、会議の議題を起案することもできる。
投票権を新聞社側がどれくらい持つかは考えようだが、過半数を持つと緊張感がなくなるので、1/3くらいが妥当ではないか。
事業への参加は投票権にとどまらない。
会員自身のリソース(知識や技術、人脈、時間、体力等)を使って、積極的に事業に携わることもできる。参加方法については、次項「登録ボランティア」で提案する。

会員組織化の目的は、見込み客の囲い込みだ。
仮に朝日新聞読者387万人のうち3%が会員となれば、約11万人の将来の顧客を確保することになる。
情報を共有し、事業に主体的に参画し、長い期間の中で自分自身がこのサービスを使うかどうか判断していく。
CCRCのような事業の場合、新規顧客の獲得コストはバカにならない。
分譲マンションの広告宣伝費は、1戸あたり販売価格の約5%と言われている。CCRCもそれに近い数字とすれば、仮に3,000万円のCCRC入居費用に対し150万円が広告宣伝費となる。
これが会員化により実質ゼロになるなら、中高年の新聞読者を抱える新聞社の強みが最大に活き、高い利益率が確保できるのではないだろうか。

また会費を仮に月1,000円(学生は半額とか)とするなら、11万人会員に対して、会費売上が年13億2,000万円となる。
同社の新聞部門の営業赤字は約70億円であったが、会費売上だけで約20%を補填することとなる。会費売上の上に新規事業の売上が乗る形で、2層構造の収益モデルが出来上がる。

20代の若者の新聞購読率は2.6%だが、社会課題に対する関心は中高年層より高い。
また矢野経済研究所の阿部由人氏のnoteによれば、医療・ヘルスケア領域の従業者数は960万人、介護施設233,783事業所、病院8,205施設等の巨大産業だ。
新聞社が、ウェルネス分野に特化して情報発信、会員組織の運営を行えば、若者層やヘルスケア業界を中心に、新しい読者の獲得も期待できる。

会員による有償ボランティア

60代以上の会員の多くは退職、人によっては仕事を続けているが、補助的な仕事が多くなり、それまでと比べれば、やりがいが持てず、時間に余裕が出来るだろう。
彼らは、特定分野について長い経験やスキルを有しており、可能であればそれを社会の為に使いたいと考えるし、気力や体力も充実している。
会員が担うボランティアの仕事は、高い専門性が求められる分野から、補助的なものまで多岐にわたるだろう。
CCRCの事例でいえば、新聞社には流石に設計業務が出来る人材はいないかもしれないが、11万人の会員の中には、ゼネコンで建築士として活躍していた人がいるかもしれない。私はNPO法人でボランティア経験があるが、会報の発送作業を月に2時間、仕事帰りにしていたレベルだ。
組織へのかかわり方は人それぞれだが、何歳になっても社会とつながりをもち、社会や組織から必要とされるのは幸せなことと、仕事人間の私は考える。

ボランティアは、継続性や成果性を考えるなら有償が良いだろう。
有償ボランティアは時給500円とか日給3,000円など最低賃金を下回る金額が一般的だ。
今回のボランティアも、お金より、やりがいを重視する人が多く集まるだろう。

ボランティアは、「新聞社ファンドの投資先企業」でも仕事をする。
いきなりファンドが出てきて面食らうかもしれないが、会員組織とあわせ、私が考えるこの事業のもう一つの特徴だ。

所有と経営を分離する

ファンドをイメージするなら、「星野リゾート」について知って頂くのが手っ取り早い。
全国の有名観光地でホテル・旅館を運営する星野リゾート。
星野リゾートの旅館を運営するのは、紛れもなく星野リゾートであるが、その旅館を所有するのは星野リゾート・リート投資法人(星野リゾート・アセットマネジメント)だ。
星野リゾートは、投資法人に毎月の賃料を払って借りている。
そして投資法人は一般含む投資家から資金を集め旅館を建築、賃料の一部を還元している。

新聞社でも、投資法人がファンドを組成し、投資家から集めた資金で新規事業に投資する形を考えてみた。
私が所有(ファンド)と経営(新聞社)を分離した理由は次の通りだ。

大きな社会課題の解決を、たった1社の新聞社が単独でできるものではない。
社会課題に対する新聞社の役割は、その課題について広く社会に知れ渡らせることと、その産業やベンチャーを育てていくことがあると考える。
そのためには、紙面で情報発信をおこなうような間接的な貢献と共に、ファンドを通じてベンチャーに資金支援するような直接的な貢献もあるだろう。

実際の所、星野リゾート・リート投資法人でも、「星のや」や「界」のようなグループ事業への投資もあれば、グループ以外のホテルへの投資も行っているようだ。

投資家は法人、個人の機関投資家もあれば、会員の一部も投資家になるだろう。よく分からない企業の株を持っているより、自分が運営にタッチしている事業に投資している方が、よほど面白いのではないか。
ファンドとしても、投資先が上場すれば、更に大きな収益を得る事になる。

また前項で触れたように、会員はボランティアとしてもベンチャー育成に貢献する。
ベンチャーの支援先が増えれば、地域限定や特定分野特化など、ボランティアの幅や量が格段に増えることだろう。
中には、専門スキルを買われて、そのまま社員としてベンチャー企業に入社する人も出てくるかもしれない。
更に先行する新聞社には、ベンチャーの伴走支援者として共に汗かく役割を期待したい。

これで会費売上と新規事業売上に、ファンド運用営業収益が加わった。

素人自前主義

本質からそれるように見えるが、案外重要なことと考えている。
このような類の新規事業に取り組むと、多くの大企業は有名企業とアライアンスを組みたがる。例示したCCRCなら、さながら三菱地所や日本生命、三井住友銀行といった所か。
でも、私はそれが間違いで、失敗の原因になると考える。

新聞社の新規事業は自前主義で取り組むべきだ。
理由その1、会員(将来の見込み客)は、新聞社へのロイヤリティが高い。
誰もアライアンス企業のネームバリューに惹かれて入会するのでない。
理由その2、プロセス自体が商品の一部となる。
立ち上げの苦難や失敗談、その先の成功を会員と共有する事も商品の一部だ。経営不振の新聞社の元記者や元編集者が素人ながらも必死で頑張る姿はドラマチックであり、応援(資金)が集まる。
理由その3、社会課題を解決するような事業は、ともすると利益率が低い。
利益率の低いビジネスを、アライアンス企業と利益折半すれば、せっかくの強み(新聞購読者)が元の木阿弥だ。

アライアンス組まず、全ての仕事を自前でするなら、新聞事業からの異動が必要だ。
最後に、異動の規模感をイメージしておこう。
朝日新聞の営業赤字70億円、平均給与1147万円、経費に占める人件費の割合25.5%から試算、新規事業へ必要な異動人数は155人となった。(同社有価証券報告書参照)
155人の素人集団が、事業開発から営業、会員組織の運営、ベンチャーへの伴走支援まで行うことになるが、新聞社の社員は総じて優秀だからきっと出来る。

まとめに変えて

以上が、私が考えた新聞社の生き残り戦略。
ネットに低価格な情報が溢れかえり、猛スピードで読者離れが進む中、ジャーナリズムだけで新聞社の経営を続けるのは気の毒だが不可能だ。
これからは、ジャーナリズムの力を使って、自分達が具体的なアクションを起こして社会にインパクトを与え、それを基に収益を獲得するようにしなければならないのではないか。

初めにも書いたが、新聞社には唯一無二の強みがある。
この強みは、同じメディア企業であるテレビ局や雑誌社にないばかりか、国内のあらゆる産業や企業が持ち得ないものだ。
この強みを活かす方向に舵を切る限りは、新聞社の経営再建に私は割と楽観的だ。

新聞社のミッション

情報の力でより良い社会を作る

 

新規事業のビジョン

・新規事業を通じて社会の課題を解決する
・自立分散型の会員組織を運営する
・自社のリソースを使って、社会全体の発展とベンチャー育成に影響力を発揮する

 

新規事業による貢献収益

・会員からの会費売上
・新規事業本体の売上
・ファンド運用営業収益
・その他、新聞定期購読者増やコンテンツ売上

 

このブログの心残りは、新規事業のサンプルをCCRCとした点だ。
正直、CCRCは新聞社の新規事業として面白くもないし、高齢者の孤独孤立の解決に資する事業とも思えないが、私の頭の中に具体的なアイデアが浮かばなかったのでご容赦いただきたい。
長時間労働が常態化している新聞社だからこそ働き方改革の社会実験事業とか、地域経済を活性化させる事業とか、そんな事業に取り組んで欲しいのが個人的な思いだ。

このブログを書くきっかけをくれたのは、朝日新聞ポッドキャストだ。
新聞社社員の人達がメディアの未来について本音で語られている事にインスピレーションを受けた。最後に出演する奥山、伊藤、神田の各氏に謝意を表したい。

■参考情報

三菱総研 未来共創イニシアティブ
https://icf.mri.co.jp/

朝日新聞社ポッドキャスト メディアトーク
https://www.asahi.com/special/podcasts/?pgid=07a1de49-67cf-4714-8581-ac1000059302

朝日新聞 第170期(2022/04/01-2023/03/31) 有価証券報告書
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/ednr/20230626S100R29L/

シェア金沢(日本版CCRC)
https://share-kanazawa.com/

星野リート・投資法人 決算説明資料(2023年10月期)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3287/ir_material_for_fiscal_ym/147069/00.pdf

医療・ヘルスケアの従業員数Map
https://note.com/yri_healthtech/n/n54f8fe4d30a2