これから転職を予定している人、就職活動を始める人向けに、フランチャイズ業界についての研究記事を書きました。
フランチャイズも様々な業種があり、ざっくり眺めるだけでは本当の姿が分かりません。
希望の業種の将来性や特徴を、出来るだけ平易な言葉で、時に辛口コメントを挿みながら、まとめました。
転職・就職活動のヒントになれば嬉しいです。
この文章を書いている私は、コンサルタントとして20年以上のキャリア、現在は事業会社で役員をしています。立ち上げより2年で100店舗、成長著しいフランチャイズのコンサルティング経験があります。
フランチャイズの統計データ
2018 年度のフランチャイズ本部数は1,328 チェーン。総店舗数は 26 万 4,556 店、10 年連続の増加です。
フランチャイズの本部数 1,328チェーン
売上高は 26 兆 2,118 億円で、昨年より 6,520 億円増(+2.6%)、こちらも9 年連続の増加となり、フランチャイズの市場は拡大を続けています。
フランチャイズ最大の業態はコンビニエンスストア。市場26兆のうち、約半分に迫る11兆円がコンビニの売上です。
詳しいデータはこちら
https://www.jfa-fc.or.jp/particle/29.html
飲食業のフランチャイズは?
フランチャイズ業界で、最も浮き沈みが激しく、ハイリスク・ハイリターンの分野です。フランチャイズショーを見ても、毎年顔ぶれが変わります。
知名度あり、大手とされる企業も、突然に業績悪化で店舗リストラといったニュースが流れてきます。
カレーのCoCo壱、業績絶好調から1年のうちに大不振のニュースが。
◆ココイチ、際限なき連続増収&死角なき圧倒的好調の秘密(ビジネスジャーナル 2019年1月2日)
◆カレー「ココイチ」の壱番屋、既存店・全店ともに売上高がマイナス成長に(LIMO 2020年1月17日)
こうなると当然、本部の経営も不安定です。
一方で、メガヒットを飛ばすのも、この業界の特徴。
最近のメガヒットでいえば高級食パンの「乃が美」。
乃が美は公式HP上などでフランチャイズ募集はしていない旨を書いていますが、別ブランド「乃が美はなれ」が実質的にはフランチャイズモデルです。契約のスピードに出店が追い付かず、出店待ちが列を作って待っていると業界関係者から話を聞いたことがあります。
郊外ロードサイドに目立つ「コメダ珈琲」もメガヒット。
現在、直営FCふくめ全国900店近く。投資1億円超えの大型フランチャイズですが、5~7年で投資回収でき、きちんと儲けさせてくれると評判です。
フランチャイズで儲かる企業の評判は広がり、加盟希望者が殺到します。
一昔前なら、「カーブス」も評判良かったですし、当然「セブンイレブン」も、いろいろ問題はあるけど確実に儲かると評判でした。
流行りといえば、タピオカブームで多くフランチャイズが立ち上がっています。(2020年3月時点)
初期投資を抑えめで始めることができるので、市場への参加が早ければ、ブームが終わる前にひと儲けが出来たでしょうけど、流石に今からでは乗り遅れでしょう。
フランチャイズでなくとも飲食業経営は厳しいです。
開店から1年で10%が閉店、10年間続くのはたった10%と言われる厳しい世界です。厳しい環境の中で、本部にロイヤリティを払って経営が成り立つのか疑問です。
次の乃が美は?タピオカの次のブームは?
成功するフランチャイズにいち早く気付き、その波に乗れれと言いますけど。
次のメガヒットなんて誰も予測できません。
サービス業のフランチャイズは?
時代のニーズを上手くつかんだビジネスモデルが勝ち組です。
色々な業種のサービス業を、ひとまとめにしてコメントするのは難しいですが、時代のニーズでとらえて、分類すれば4つに分かれます。
人手不足対応型の事業モデル
例えば、24時間フィットネス、コインランドリー、シェアオフィス、コインパーキングやカーシェアリング等のフランチャイズは、いずれも人手が要らない(あるいは最小限)のモデル。
従来ならマンション経営の不動産投資家を、人に頼らないビジネスモデルで、フランチャイズの世界へ呼び込むことに成功しました。
フランチャイズ事業・・・エニタイムフィットネス、タイムズ24など
高齢化社会対応型の事業モデル
高齢化が進み、自分独りでは何かとやり辛い高齢者の生活をサポートする事業モデルが増えてきました。
例えば、リフォーム、ハウスクリーニング、修理、便利屋など。これらのサービスの圧倒的な利用者は高齢者です。
これら事業モデルの特徴は、初期投資がそれほどかからないこと。それと開業前の研修プログラムが最もキモであり、それを売りにしている本部が多いこと。
業界未経験者でも研修を受ければ一人前に。こんな打ち出し方により、個人の独立希望者を多く集めます。
フランチャイズ事業・・・ベンリー、おそうじ本舗など
循環型社会対応型の事業モデル
本、パソコン、服、宝石、ゲーム、自動車など、あらゆる商品毎にリサイクルビジネスが花盛りです。
古本屋さんや質屋さんなど。最も重要で、個人の経験に頼っていた商品の買い付けを標準化することにより、一気にフランチャイズが拡大しました。
ブックオフのように買取システムを構築、店内でアルバイトでも買取価格が査定できるモデルもあれば、おたからやのように本部にデータを送って、本部に常駐するプロが価格算定してもらうモデルもあります。
いずれの商品にせよ、このビジネスの根幹は、売れる商品を安く買って高く売る、「商売の基本のキ」の部分です。
この基本のキを標準化できた所に、この事業モデルの成功があります。
フランチャイズ事業・・・ブックオフ、おたからやなど
美容・健康志向対応型の事業モデル
美容室、エステやネールなどの美容関連市場、フィットネスやヨガ教室、マッサージなどの健康関連市場。人生100年時代の中で、1人1人の美容や健康に関する意識が変わり、新しく大きな市場が生まれました。
チャンスと見れば、多くの新規参入事業者が市場に雪崩れ込んできました。
市場競争は激しく、フランチャイズのプレーヤーもどんどん顔ぶれが入れ替わります。
直営1~2店舗出店の後、まだ充分にノウハウが蓄積できていないうちから、フランチャイズ本部になる企業もあり、まさに玉石混合。
これまでの実績や今後の可能性を、よく見極める必要があるでしょう。
フランチャイズ事業・・・ラセーヌ、イレブンカットなど

教育産業のフランチャイズは?
少子化で全体は縮小しているにもかかわらず、一人にかける教育費は増えているため、まだ多くのフランチャイズ本部が存在、それぞれ安定的なビジネスを展開しています。
大手と呼ばれる、栄光ゼミナール、明光義塾、公文など、いずれもフランチャイズ展開をしています。
これくらいチェーン化が進んでしまうと、全国展開の認知度がモノを言い、マーケティング力や広告宣伝で個人経営が太刀打ちできない状況になっています。どんどんコンビニに塗り替わってしまった小売業と同じ道を辿りそう。
こうなると、個人の意思と関係なく、これから塾で独立開業する人は、フランチャイズ加盟しなければ経営できない、そんな時代になりつつあります。
したがって、教育系フランチャイズは、成長拡大とは言わずとも、安定的で持続的な経営が可能だと思います。
最近は、幼児向けや、スポーツスクール、プログラミングスクールなど、色んな新しい教育分野が出て来ました。
飲食業同様、フランチャイズに加盟したからと言え、採用難の問題が解決する訳ではないので、人の問題はフランチャイズに関係なく、向き合う必要があります。
フランチャイズ事業・・・家庭教師のトライ、ベビーパークなど
小売業のフランチャイズは?
コンビニエンスストア、100均ショップ、レンタルショップ、リサイクルショップ、中古車販売などの小売業がフランチャイズを募集しています。
コンビニ各社、ツタヤ(CCC)、ブックオフ、ダイソー、ガリバーなど、業界全体をけん引する巨大フランチャイズが最も登場しやすい業態です。
一方で、フランチャイズこれまでけん引してきたコンビニエンスストアが、いよいよ飽和状態となり新規出店のスピードが鈍化しています。
業界が完全に成熟期に入っているので、この分野でこれ以上の成長は望めません。
小売業では、これら以外に巨大な市場としては携帯ショップなどもありますが、一般的には代理店と呼ばれ、フランチャイズとは違った契約内容となります。
フランチャイズ事業・・・セブンイレブン、ツタヤなど
介護福祉のフランチャイズは?
高齢化社会に介護市場は間違いなく成長を続けます。
しかも国の制度によって、事業者は守られているため、景気の波によらず、安定的な経営が出来るのが特徴です。
一方でデメリットは、サービス料金は国が一律で決めてしまうなど、財布のヒモは国が握っているため、経営の自由度はありません。
最近は国が財布のヒモを締め出して、事業者により厳しい条件を突き付けているので、倒産や廃業する事業所も多く、サポートがあるとはいえ、未来永劫に身分が保証されている訳ではないです。
介護福祉サービスは、ノウハウを個人に依存するサービス、フランチャイズでこの問題を解決しているとは言い難いです。
むしろ小売業のようにチェーン化が進んでいないので、地域に密着した中小企業が頑張っています。
ただ将来的にはチェーンによる寡占化の波が押し寄せそう。
教育産業と同様、生き残るためにフランチャイズに加盟し、チェーンの中に組み入れるしか選択肢がなくなる可能性があります。
こちらも飲食業や教育産業と同様、フランチャイズに加盟したからといえ、人材の問題が解消できるものでなく、そこは別問題です。
ライフサイクルからフランチャイズを分類
商品にもサービスにもライフサイクルがあります。
世の中に出ようとしている商品、例えば自動運転の車もあれば、CDレコードのように別のものに取って替わられ、世の中から消えようとしている商品も。
フランチャイズにも同じことが言え、立ち上げ当初の事業もあれば、およそ全国にサービスが行き渡り飽和状態になっている事業もあります。
プロダクトライフサイクル(PLC)とは、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのステージからなるS字型カーブの成長パターンです。

導入期
全てのフランチャイズが導入期から成長期へ達する訳ではありません。
導入期から、いきなり衰退へ進むかも。
導入期の本部への転職なら、事業や本部、全てに目利きが必要です。
神様でない訳で、1回や2回の面接で、その企業の全てが分かることはなく、導入期のフランチャイズ本部を転職先に選ぶのは高リスクです。
その転職により、成長できるのか、自分の価値は高まるのかも含めて考えましょう。
成長期
営業開発の仕事をするなら成長期の本部を選ぶべきです。
目安は直近1年間で100店舗くらいのスピードで出店を続けているなら成長期の企業です。
成長期の本部に入るメリットは、自分の成長につながる事、そして収入です。
成長期の本部は、問い合わせが多く、打席にたくさん立ててバットを振れるからです。当然、成長も早く、その分、収入面にも跳ね返ってきます。
成熟期
本部が多くの利益を稼ぐのは、成長期でなく成熟期です。
成長期の攻めの時代から、成熟期は守りの時代。
各加盟店が成果をあげて、より多くのロイヤリティ収入を得ること、廃業撤退することなく店舗を継続することが、本部の主要課題です。
したがって、成熟期の本部で活躍するのはSV(スーパーバイザー)や教育担当者となります。
衰退期
衰退期の企業に好んで入社する人はいないでしょうけど、間違った判断をしてしまいがち。
衰退期の本部を見分けるポイントは説明会や面接の場でなく、フランチャイズショーのような展示会へ行って、成長している本部と比較してみれば一目瞭然で分かります。
転職するならフランチャイズ展示会へ絶対に行くべしです。
顧客の属性で分類
要はフランチャイズに加盟する顧客の属性です。
・個人中心
・個人と法人(比較的小規模)がミックス
・法人(中規模以上)中心
こんな感じで3つに分かれますが、これにより本部の仕事もガラッと変わります。
個人中心
いわゆる独立開業を目指す層に対する営業やSVになります。
きつい言い方になるかもしれませんが、フランチャイズに加盟する個人というのは、自力で独立する自信がないため、いわば他人の力をお金で買う訳です。
したがって、往々にして依存心が強く、「本部にやってもらう」意識が強いです。(そもそもフランチャイズを選択する時点で、個人に限らず、法人にも言えることですが)
しかも、個人ですので当然ですが、初期投資は他と比べて低め。
安く、かつ依存心が強い、つまり、このカテゴリーのフランチャイズはずばり非効率です。1件あたりの契約単価も低いので、営業はより多く契約を求められます。
またフランチャイズによっては、初期を抑えめにして、月々のロイヤリティを多くして、見かけを良くする本部も。
それでなくとも、開業後、本部と何かとトラブルが多いのもこのグループです。
煩く面倒で、とにかく足が向かないと愚痴をこぼすSVも。気持ちは分かりますが。
個人と法人
法人にとっては少額投資、個人にとっては大きな投資です。ちょうど中途半端な規模の事業です。
問い合わせの数では個人が多くなりますが、契約自体は同数か法人が多くなります。
法人中心
初期投資で億を超えるレベル、こうなると個人は手がでないので、法人中心になります。
法人の特性として、多くのフランチャイズ候補の中から選択するので、事業を見る目はシビアです。
また窓口が担当者(サラリーマン)となるケースが多く、個人や小規模法人と比べ、決定までに時間と手間がかかります。
一度関係が出来ると、その後のリピートが期待でき、大口顧客が持てれば、特に営業することなく契約がバンバン取れたりします。
フランチャイズ業界を更に研究するには
百聞は一見に如かず。
フランチャイズの業界研究方法は2つ。
・フランチャイズショーへ行ってみる
・フランチャイズ紹介サイトに登録する
日経が主催するフランチャイズショーは、年1回、東京ビックサイトで開催される日本最大規模のフランチャイズに関する展示会です。毎年、多くの方が訪れ、活況です。(2020年は残念ながらコロナウィルスの関係で中止となりました)
2021年からはフランチャイズビジネスEXPOも開催され、ますますビジネスショーも活性化しますね。
もうひとつ。ウェブで研究するなら、フランチャイズ紹介サイトがあります。マイナビ独立やフランチャイズの窓口には、多くのフランチャイズ情報が掲載されています。
東京の展示会にはなかなか行けないという人、年1回の開催まで待てないという方は、こちらのサイトで研究するのもアリですね。
フランチャイズ本部におすすめ転職エージェント
フランチャイズ本部は求人数そのものが少なく、結果的に狭き門です。
したがって、主には営業系に強い転職エージェントに複数登録し、非公開求人含めて、紹介してもらうのが、賢い方法です。
業界最大手のため、転職を考えるならまず登録するのがリクルートエージェント。
一方、管理・専門職、ミドル・ハイクラス向けの高年収層(年収600万円以上)に特化したJACリクルートメント。既にフランチャイズ加盟開発の経験があるなら、こちらも狙い目です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。