こんにちは、Kotobukiです。
事業会社で介護福祉部門の役員をしながら、このブログを書いています。
介護職員を採用する際、介護施設が民間の人材紹介会社(転職エージェント)に支払った手数料が1件当たり平均501,000円となることが厚生労働省の調査により分かりました。
その一方で、2020年度の介護職員の1年間の離職率は14.9%。
高いお金を払っても、なかなか人が定着しない業界の現状です。
政府は高齢者が活躍できる環境整備を目的とした「高年齢者雇用安定法」を改正、令和3年4月1日から、従業員が70歳まで働けるよう企業に努力義務を課しています。
介護業界で「高年齢者雇用」が、どのように進んでいくのか、みて参りましょう。
これからも「超人手不足」が続く介護業界
日本は超高齢化社会、介護が必要な方は増え続けています。
厚生労働省のデータをもとに、2000年から2015年の15年間で、要介護者と介護職員がどれほど増えたのかみてみましょう。
2000年 | 2015年 | 2015年/2000年 | |
要介護者 | 218万人 | 608万人 | 2.78倍 |
介護職員 | 54.9万人 | 183.1万人 | 3.33倍 |
要介護者/介護職員 | 3.97人 | 3.32人 |
ご覧のように、15年間で介護職員の数は、要介護者と比べて増えました。
2000年には介護職員1人が約4人の要介護者をケアしていましたが、2015年になると約3.3人と減っています。
国は介護職員の待遇改善や、外国人技能実習生の導入など、人材確保に一貫して注力していますが、少しずつその成果が表れているようです。
しかし、人口の多い団塊の世代の高齢化が進み、要介護者は今後も増え続けます。
厚生労働省によると2025年には約245万人の介護職員が必要と試算します。
毎年6万人の新たな働き手が必要となりますが、日本の人口が減る中、この数字の実現はかなり厳しいものがあります。
そもそもの働き手が少ない中、求人は増えているので、介護業界は「超人手不足」です。
直近(2021年)では、有効求人倍率(就職希望者1人に対する求人数)が3.6倍、コロナ禍の中でも企業の求人意欲は減退していません。
全職種 | 介護職 | |
有効求人倍率(2021年) | 1.16倍 | 3.6倍 |
ちなみに、有効求人倍率はハローワークの情報を元に算出されるため、実態を表していないとも言われています。
事業者としては、更に厳しいというのが肌感覚です。
介護業界の超人手不足は深刻
出生率が低下する中、若い世代はどこの業界にとっても貴重な戦力、介護業界が新卒者を採用する難易度は極めて高いです。
外国人技能実習生の受け入れも手続きに時間がかかり、思ったように受け入れられていないほか、コロナで受け入れが一時ストップしています。
AI(人工知能)や介護ロボットの活用も期待されていますが、すべてを自動化することは困難です。
まさに八方ふさがりの状況、介護業界の超人材不足は解決し難い問題です。
高年齢者雇用安定法とは
2021年4月、改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業にはいずれかの就業確保措置をとる努力義務が新設されました。
① 70歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
厚生労働省の調査によると、定年制を廃止した企業は全体の4.0%(全業種)。
多くはないですが、介護業界でも「定年制を廃止」するケースが増えています。
高年齢者の雇用状況
介護スタッフの年齢構成は次の通りです。
20歳未満 | 20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~64歳 | 65~69歳 | 70歳以上 | |
施設系男性(23.6%) | 1.4% | 27.6% | 33.3% | 18.4% | 9.2% | 4.0% | 3.3% | 1.2% |
施設系女性(74.2%) | 1.0% | 14.0% | 19.7% | 25.1% | 22.5% | 8.8% | 5.1% | 1.7% |
訪問系男性(8.2%) | 0.4% | 15.0% | 20.5% | 20.1% | 18.3% | 9.7% | 8.4% | 4.1% |
訪問系女性(89.6%) | 0.1% | 3.4% | 9.8% | 21.0% | 25.9% | 16.6% | 14.3% | 6.9% |
「男性より女性」、「施設系より訪問系」が高年齢者雇用の実態です。
訪問ヘルパーの36%が60歳以上というのは、他の業界では類を見ません。
しかも、平成27年度の調査です。
定年制を廃止する企業が増える中で、その構成は更に増えることも予想されます。
高年齢者の求人状況
介護系の大手求人サイト「ジョブメドレー」では、介護職の掲載情報数は82388件のうち、6208件の求人が年齢制限を設けていません(2022年7月時点)。
これは全求人の7.5%は、高年齢者の活躍からすれば、まだまだ少ない数字です。
でも採用する側からすると、競争企業が少ないのは有り難い。
人手不足に悩む介護事業者にとって、高年齢者の採用市場は「宝の山」です。
業種毎の求人を見て参りましょう。
訪問系 1950件(全体の31%)
通所系(デイサービス等) 1143件(18%)
入所系(特別養護老人ホーム等) 2201件(35%)
高年齢者が既に活躍する訪問系(ヘルパー)はもちろん、夜勤のある特別養護老人ホーム等の入所系施設、要介護者が通うスタイルで勤務時間が安定しているデイサービス、あらゆる業種で求人があります。
個人的には、初めて高年齢者が介護業界へ進むならデイサービスをお薦めします。
理由は勤務時間が安定しており、仕事の難易度や専門性も高くありません。
その一方、専門性をより高めたいなら、入所系施設がいいかもしれません。
デイサービスの仕事内容
デイサービスの仕事内容は主に次の通りです。
・入浴介助(個浴でのマンツーマン対応)
・食事介助(介助が必要な方は僅か。主に配膳下膳です)
・体操やレクリエーション(初めは補助役から)
・利用者の話し相手
・送迎業務(全員ではない)
・調理業務(全員ではない)
家庭の負担を軽減するため、入浴サービスを提供するデイサービスが増えています。
入浴介助は、デイサービスの仕事内容の中で最もハードな仕事です。特に非力な女性や、腰痛が持病となっている高年齢者には辛い仕事です。
入浴サービスのないデイサービスもあるので、事前に確認しておきましょう。
レクリエーションや体操は、デイサービスがライバルと差別化するため、力を入れる分野です。
とは言っても、専門施設を除けば、高度なものはありません。ラジオ体操をイメージすれば良いかと。
人前で話したり、パフォーマンスしたりするのが得意な人にはうってつけです。
車の運転が得意な方や、ドライバー経験の長い方なら、送迎業務はうってつけです。
介護事業所で経験を積み、介護士の資格を取れば、介護タクシーとして独立開業して安定的な収入を得る道も開けます。

料理が得意な方、飲食関係で仕事をしていた方、栄養士の資格をお持ちの方なら、高齢者向け、要介護者向けの料理分野は将来的に安泰です。
もちろんデイサービスだけでなく、介護業界には色々な業種があり、それぞれ仕事内容は異なります。
入所系施設なら夜勤の仕事もあり、少ない勤務時間で効率的に稼げるため、体力に自信のある方なら、それもお薦めです。
まずはシニアボランティアで仕事体験も
この記事をお読みの高年齢者の皆さんなら、ご自分や配偶者の親の介護を経験されている方は、多いでしょう。
それでも、初めての業界で不安が多いという方なら、ボランティアや職場体験を通じて、介護業界のことを知っていただく事をお薦めします。
ボランティアを探すなら、「シニアボランティア+(お住まいの県や町)」で検索すると、ボランティアを紹介するサイトが幾つかヒットしますので、その中から気になる内容をチェックしてみてください。
また「シニアボランティア・ポイント事業」という仕組みが市町村にあります。
「シニアボランティア・ポイント事業」は、高年齢者を対象に、その名の通りポイント制が採用されたボランティア活動で、貯まったポイントは換金できます。
名称はそれぞれ違いますが、「シニアボランティア+ポイント事業+(お住まいの県や町)」で検索すると、自治体のHPにヒットします。
ボランティア先は、介護施設や保育所などが中心ですので、これから介護業界へ転職を考える高年齢者にはピッタリのサービスです。
なお、対象は65歳以上、ボランティアに参加する場合は、事前の研修受講と登録が必要です。
研修回数が少ないため、ボランティアを始めるまでに時間がかかるのが難点です。
それぞれ、お住まいの自治体の情報をチェックしてください。
シニアボランティア・ポイント事業の例
ボランティア活動は、介護施設のスタッフを補助する仕事が中心となります。
高年齢者が介護業界へ転職するなら
高年齢者が介護業界へ転職するなら、求人サイトから直接応募するのが近道です。
ハローワークもありますが、介護の求人数が少ない上に、窓口の対応は40代、50代の方が中心となるので、扱われる優先順位が低いです。
介護の求人サイトなら、「ジョブメドレー」をお薦めしています。
ジョブメドレーをお薦めする理由は、業界最大手(上場企業)で安心できること、求人数が多く都会から田舎まで幅広く情報があること、60歳以上の求人情報が直ぐに検索できることがあげられます。
会員登録(無料)しておくと、ご希望の条件にあった求人情報をメールやLINEで送ってくれるので、パソコン操作が苦手な方でも安心です。
ジョブメドレーにつては、こちらの記事に詳しく書きました。

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今日はここまで。
最後までお付き合いいただきありがとうございました