この記事では、転職や独立に有利な“食える(仕事のある)資格”をピックアップしてみました。
この記事を書いている私は、人事コンサルタントとして20年以上のキャリア、今は事業会社で役員をしています。
様々な業界の人事や採用に携わってきましたので、それぞれの資格が転職の場面、さらには実務でどのように役立つか知り得る立場です。
この記事では、「食える」を5つの観点から5点満点で評価(25点満点)、中でもポイントの高い資格をお薦めしています。
評価の観点はこちら。
・難易度
・平均給与
・求人ニーズ
・独立
・将来性
どういう事か見てまいりましょう。
食える資格とは
難易度
特別な努力や頭脳が必要な資格、例えば弁護士や会計士は、今回の記事から除外しました。
・1~2年の受験対策で取得可能
・中高年からチャレンジしても遅くない
上記の条件は、現在進行形で仕事をするサラリーマンには重要なことです。
平均給与
同じ業界内で仕事をしても、資格者の給与が、無資格者のそれを上回るものを集めました。
客観的な判断ができるよう、可能な限りデータ(平均給与額)で提示しています。
無資格者に平均給与額で上回るには、業務独占資格(弁護士のように、資格が無いと出来ない仕事がある)であることはポイントです。
求人ニーズ
幾ら価値があっても、求人がそれほど無ければ、資格が無用の長物となります。
売り手市場で、求人数が多い資格を集めてみました。
売り手市場となれば、必然的に平均給与も上がる事になります。
独立
いずれは独立開業と、夢見る人もいるでしょう。
・資格を持つことにより独立の道が開ける
・独立後も安定的な収入が期待できる
これらは、独立の目標を持つ人にとっては重要な観点です。
将来性
特に若いビジネスマンにとっては、今よりむしろ、資格の将来性が気になる所です。
お薦めの資格
5つの観点から評価、元人事コンサルの私がお薦めする資格は次の通り。
・宅建士
・児発管
・M&Aアドバイザー
・介護福祉士
宅建士(宅地建物取引主任者)
総合評価 18.5点
難易度 4
平均給与 3.5
求人ニーズ 4
独立 4
将来性 3
宅建資格の難易度
宅建士とは、不動産取引の専門家です。
毎年10月に20万人前後の人が受験する最大規模の国家資格です。
リタイアした会社員から主婦、学生、銀行員など直接的には不動産取引とは関係の無い人まで、幅広い人が受験しており、根強い人気があります。
合格率は、年により違いはあるものの、およそ15~18%程度。
社労士や行政書士等の他の国家資格と比較して、合格率は高めです。
合格までの勉強時間は500時間。
計画的にスケジューリングすれば、1年で合格可能です。
1年で宅建試験に合格するまでのロードマップをこちらにまとめています。

宅建士の平均給与
不動産業界の平均給与を見てみましょう。
厚労省が毎年発表する「賃金センサス(2019)」によると、不動産取引業で平均年収611万円(年齢39歳)、不動産賃貸業・管理業で平均年収480万円(年齢45.3歳)です。
不動産取引業と、不動産賃貸業・管理業の違いですが、営業色が強いのが取引業、事務色が強いのが賃貸・管理業です。
不動産取引業の場合は、成果(契約)に応じた歩合給を導入している企業が多く、ハイリスクハイリターンです。結果次第で年収数千万円や億超えも夢ではありません。
年収は低くても、営業が苦手なので堅実にやりたいという人なら、不動産賃貸・管理業を目指しましょう。
不動産業界の平均年収と高年収企業の探し方については、こちらにまとめています。

宅建士への求人ニーズ
事業として不動産取引を行う場合、各事業所に必ず1名以上の宅建士が必要です。
事業所は、宅建士なく事業を継続することが出来ず、宅建士は業務独占資格です。
その一方で、不動産業界の離職率は高く、常に人の入れ替わりがあり、常にどこかの企業が求人募集しているイメージです。
業界内で人がグルグルと移動しているため、その流れに乗れば、未経験者でも比較的容易に職にありつけそうです。
宅建士の転職事情については、こちらにまとめています。

宅建士の独立事情
宅建士は事務所と携帯電話があれば、比較的簡単に独立可能です。
ただし、宅建士の資格があるから独立が成功する訳でなく、独立は培ったノウハウと人脈、つまり実力次第です。
宅建士独立の魅力は、まさに「コピー機、携帯一台」から身軽に独立できること、にも関わらず、成果次第で大きな収入を手にすることが出来ることです。
独立の際の費用ですが、最小限の見立てで事務所費用として100~200万円、営業保証金分担金が60万円です。業界団体への加盟金で120万円等。
トータル400万円~が、独立開業資金の最低限の目安です。
業界団体への加盟は任意ですが、加盟しない場合は宅地建物取引業法に定められた供託金1000万円が必要となり、加盟した場合より多くの資金が必要になります。
電話一台からとはいえ、意外にかかるものですね。
宅建士は副業しやすい資格です。
むしろ宅建資格を使った副業を当サイトではお薦めしています。

宅建士の将来性
宅建士の将来性は、次の3つの理由で決して明るいと言えません。
・不動産市場の縮小
・宅建士の仕事がITに代わる
・競合宅建士が増える
以上の3つです。
とはいえ、進む道を間違わなければ、未来は決して暗いばかりでなく、むしろ、より大きなビジネスチャンスが生まれる業界です。
宅建の将来性については、こちらの記事に詳しく書きました。

児発管(児童発達支援管理責任者)
総合評価 20点
難易度 4
平均給与 4
求人ニーズ 5
独立 3.5
将来性 3.5
児発管資格の難易度
児童発達支援管理責任者(通称:児発管)とは、障害をもった子供とその家族をサポートする仕事です。
児発管になるには、資格試験の受験は必要ありませんが、「国家資格の保有」「実務経験」「研修受講」が求められます。
「保育士」「理学療法士」「看護師」「教師(教員免許保有者)」などの場合、案外と知らずに実務経験をパスしていたりするので、あとは研修受講のみとなります。
一部の方に限られますが、意外と難易度の低い児発管です。
児発管の要件については、こちらの記事に詳しく書きました。

特に保育士で既に数年のキャリアのある方は、児発管になるチャンスがあります。児発管の仕事の魅力や保育士にとってのメリットは、こちらの記事に書いています。

児発管の平均給与
賃金センサスの平均データはありませんが、児発管の平均給与は高騰を続けており、年収500万円前後となっています。
平均給与は、この2~3年で倍増するくらいの勢いで、その原因は圧倒的な児発管不足によるものです。
年収500万円が見えてきた事で、これまで比較的女性中心の職場であった所に、男性社員も入ってきました。
児発管の平均給与について、公的なデータがないものですから、こちらの記事では地道に求人サイトに掲載している募集要項をチェックし、平均値を割り出しました。

児発管への求人ニーズ
行政から指定を受けて、障害を持った子供向けに事業(児童発達支援や放課後等デイサービス等)を行う場合、各事業所には必ず児発管が必要です。
したがって、児発管も業務独占資格です。
昨今、障害を持つ子ども達にスポットが当たり、国も強い支援策を打ち出しています。
それに伴い、児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所数が急激に増えており、児発管への求人ニーズが高まっています。
つまり、事業所の数と必要な児発管との間に需給ギャップがあり、慢性的な人手不足です。
その結果、地域の中で児発管の取り合いが生じ、給与も高騰を続けています。
児発管業界大手各社の求人事情を、こちらの記事でまとめています。

児発管の独立事情
地域の中で児発管として長く仕事をすると、行政窓口や相談支援機関、病院や保育所とのネットワークが出来上がります。
「障害を持った子供がいれば、この児発管に預ければ安心」
こんなネットワークが地域で作れれば、事業所を開設し、早期に軌道に乗せることは容易いでしょう。
児発管の仕事は経験や信頼感をベースにするため、児発管本人にお客様が付くからです。
独立のハードルは、
・開業のための初期投資が500万円~必要
・オープン当初(赤字期間中)の運転資金が500万円~必要
と、資金面になるでしょうか。
むしろ事業所を立ち上げるより、障害児童専用のベビーシッターとしてフリーで独立や副業をする方が、身軽でかつ世の中のニーズにマッチしていそうです。

児発管の将来性
超売り手市場の児発管ですが、“バブル“はいずれ落ち着くでしょう。
児発管であれば「誰でも良かった」時代から、これからは、より専門性や人間性が求められます。
とはいえ、全体の6.5%を占めると言われる障害児童。
発達障害をカミングアウトするタレントや芸術家が増えたり、パラリンピックの盛り上がり、また成功をおさめる人が増える中で、障害に対する関心が、これまで以上に高まるでしょう。
より専門性が求められますが、児発管の将来は明るいと言えます。

M&Aアドバイザー
総合評価 20点
難易度 4
平均給与 5
求人ニーズ 3.5
独立 3
将来性 4.5
M&Aアドバイザー資格の難易度
M&Aアドバイザーは国家資格ではありません。
民間の幾つかの機関が同種の資格を打ち出しており、M&Aアドバイザーは日本M&Aアドバイザー協会が打ち出す資格です。
したがって、資格を取得するには、同協会が開催する講習会を受講し、ほぼ不合格になる事のない試験を受ければ、晴れてM&Aアドバイザーとなれます。
難易度で言えば、最も簡単な資格です。
とはいえ、企業財務や税務、会社法に関する最低限の知識は持っていること前提で講習会は進むため、「バランスシートが何か全く分からない」人は、そもそも講習会が受けられないかもしれません。
M&Aアドバイザーの平均給与
M&A業界の平均給与は、金融や不動産、IT関連等と共に、他業界と比較して突出して高いです。
有名なのは、上場企業平均年収ランキングで毎年上位に顔を出す、日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズです。
日本M&Aセンターで平均年収1,414万円、M&Aキャピタルパートナーズの平均年収は3,109万円です(2019年度)

M&A業界が高年収なのは、彼らがM&Aを成立させて際に受け取る手数料報酬が高額だからです。
高い給与が欲しいなら、単価の高い商品やサービスの業界で仕事するのが原則です。
とはいえ、M&Aアドバイザーが高年収を保証されている訳ではありません。
M&A業界は実力(成果)主義。
わずかな固定給+M&A売上に連動した報奨金
が、多くの企業の給与体系です。
M&Aが成立した人と、そうでない人との間には雲泥の給与差が。
資格の有無は全く関係ありません。
M&Aアドバイザーへの求人ニーズ
思いのほか門戸を広く開いているのがM&A業界です。
様々な業界から多くの人材を集めて、その中で競争させて、勝ち残った一部の人間だけが残っていく、そんな業界です。
平均給与も高ければ、離職率も高いので、常に求人募集しているイメージです。
また大手から中小、中小から大手と業界内で循環している傾向もあります。
営業、特にトップ営業に自信のある人なら、未経験でもM&A業界はお薦めです。
個人的に思うのは、医療や介護、薬局などのM&Aニーズは高いです。
これら業界に精通していて、営業に自信があるなら、業界未経験者でも求人ニーズは高いかもしれません。
M&A業界への転職は、転職エージェント一択です。
各エージェントが、それぞれM&A各社とパイプを持っているので、一般募集から応募するより話が早いでしょう。

M&Aアドバイザーの独立事情
宅建士と同様に、携帯電話1つあれば、自分のウデ一本で独立可能な業界です。
実際、フリーのM&Aアドバイザーが多く活躍している業界です。
ただし、独立のハードルは低いですが、かといって成功するか否かは、全くの不確定要素です。
運と実力に左右されます。
M&Aアドバイザーの将来性
少子高齢化の影響を受けているのは企業も同じ。
国内150万社の中小企業のうち、半分の63万社は今も後継者が不在です。
日本においてM&Aはやっと最近になって市民権を得た段階、これから益々、企業売買が盛んになってくるでしょう。
M&A業界の将来性については、こちらに書いてみました。

介護福祉士
総合評価 16点
難易度 3
平均給与 2
求人ニーズ 5
独立 3
将来性 3
介護福祉士資格の難易度
介護福祉士は介護施設の現場の中の中心的な役割、施設の管理者に資格保有者が多いです。
介護福祉士は宅建士のような「業務独占資格」ではありませんが、児発管同様に介護施設は一定数の介護福祉士を配置する必要があるので、介護福祉士無しに施設は成立しません。
介護福祉士になるには、国家試験に合格する事が必要です。
資格取得をする方法は、介護福祉士実務経験ルート、福祉系高校ルート、養成施設ルートの3つがありますが、実務経験ルートが一般的です。
試験自体の難易度は高くないですが、実務経験に3年以上が必要であり、異業種から介護福祉士を目指す場合は、実務経験が足かせになります。

介護福祉士の平均給与
ご承知の方も多いと思いますが、介護業界の平均給与は、他業界と比べて低いです。
最近、徐々に改善されつつあるとは言え、男性の平均年収360万円(39歳)、女性の平均年収330万円(43.5歳)と、依然として低い水準です。
厚生労働省が発表した「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士の平均給料は月313,920円(常勤)、一方で無資格者の平均給料は月261,600円となり、介護福祉士との給与差は5万円です。
介護の仕事は本当にハード。
国も介護福祉士の待遇改善にもっと取り組んでほしいものです。

介護福祉士の求人ニーズ
介護福祉士の求人ニーズは大有りです。
一般のスタッフは募集していないけど、資格者は是非とも採用したい、そんな介護施設もたくさんあります。
業界全体で介護福祉士が不足しているので、資格者は引っ張りだこです。
介護福祉士の求人は、業界専用の求人媒体からが大半ですが、大手や中小も含め、有名無名も含め、無数の求人サイトが存在します。
中には、一度登録したら最後、四六時中電話がかかってきて、鬱陶しいサイトもあるので、求人媒体選びは注意が必要です。

資格学校を併設した介護の人材派遣会社はユニークです。
派遣スタッフとして現場で働きながら、介護福祉士の資格が取れる。
人材が極端に不足している介護業界ならではの取り組みです。

介護福祉士の独立事情
介護福祉士が独立するとなれば、介護施設を開業することになり、初期投資の面でハードルが高くなります。
おそらく初期投資で2,000万円以上、黒字化までの運転資金で1,000万円以上が見込まれ、初期投資に見合う利益を上げることが出来るか、大いに疑問です。
初期投資を少なく、独立開業するなら「介護タクシー」がお薦めです。
要介護者を病院へ送迎する仕事ですが、介護福祉士資格を持っと、同時に介助業務も行えるので、サービスに付加価値がつき人気となるでしょう。
介護タクシーなら「福祉車一台」から始められるので300万円以内で独立開業が可能でしょう。

介護福祉士が更に5年の実務経験を経ると、ケアマネージャー(介護支援専門員)の受験資格を得ることができます。
ケアマネージャーの給与相場は月349,980円。
介護福祉士より3万円、無資格者より9万円高くなります。
また相談支援事業所を、少ない初期投資で開業が可能です。
介護福祉士の将来性
これから益々と高齢化社会が進展し、介護福祉士のニーズは更に高くなるでしょう。
その一方で、国は施設に通わない在宅介護を推進、これをIT技術の導入と訪問介護、訪問看護で乗り切ろうとしています。
更には、医学の進歩、アクティブなシニアが増え、高齢者の健康寿命が延びて、介護が必要ない人の人口が増加することも出てくるでしょう。
私自身は、健康寿命が延び、介護に頼らない高齢者人口が増えると、期待も込めて予想しています。
最後に今回、ご紹介した資格に関する参考図書です。
こちらの本は、宅建資格取得後の仕事内容をリアルに書いています。決して華やかではありませんが、ありのままの姿を理解する上では最適な書籍です。
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本日は、このあたりで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。