この記事では、これから不動産仲介会社へ転職を考える人に向け、不動産仲介会社を初心者でも理解できるように書きました。
不動産仲介会社の仕事内容や年収、転職方法まで、この1記事で業界の全体像をつかんでいただけます。業界の事が分からない方には、ぴったりの内容かと。
この記事を書く私は人事コンサルタントとして20年のキャリア。その後は事業会社の役員をしています。いまの事業は店舗ビジネスのため不動産を取り扱う機会が多く、仲介会社の方ともよく一緒に仕事をしています。
私自身も、仕事の必要性から3年前に宅建資格を取得しました。
それでは、さっそく進めて参りましょう。
不動産仲介とは
不動産仲介とは、不動産(土地・建物)を売買、貸借する時、「売主と買主」あるいは「貸主と借主」の間に立ち、契約を成立させることを言います。
不動産仲介会社の役割
この「買う・借りるためのサポート」「売る・貸すためのサポート」を行う会社が、不動産仲介会社です。
通常は「買う・借りる側」、もしくは「売る・貸す側」どちらか一方に立ち、立った側(例えば「買う側」)が損をしないようにサポートをするケースが多いのですが、時に両側のサポートを兼ねるケースも見られます。
仲介手数料とは
このサポートに対する報酬が「仲介手数料」と呼ばれるものです。
仲介手数料は成功報酬、契約が成立した時に限り発生し、仲介手数料の金額は不動産価格や家賃によって上限額が法律で定められています。
客付けと元付け
不動産業界では「客付け」「元付け」という言葉を耳にします。
お客様を見つけてくる仲介業者のことを「客付け」や「客付け業者」と呼びます。
これに対し、一般的に大家さんや家主さんに付く仲介業者のことを「元付け」「元付け業者」と呼びます。
したがって、同じ仲介会社でも本件では「客付け」、別の案件では「元付け」として動きますので、最初から区分されている訳ではありません。
不動産仲介の業界
不動産仲介の業界は次のように分類ができます。
不動産売買 | 不動産賃貸 | |
新築 | ||
中古 |
新築売買
分譲型マンションや戸建て住宅です。
不動産開発デベロッパーが分譲し、その子会社や専門販売会社が独占的に販売するので、不動産仲介会社が関わることは、ほとんど無いでしょう。
新築賃貸
新築の賃貸マンションの仲介は、不動産仲介会社が扱う領域です。
中古売買
駅前の不動産屋さんの貼紙、新聞のチラシなどで目にします。
戸建てやマンションの中古物件の売買も、不動産仲介会社が扱う領域です。
「マンション無料査定」のチラシがポスティングされているのを目にすることも多いでしょう。これは取り扱う物件を増やす活動です。
中古賃貸
学生向けワンルームマンションなどを主に扱う不動産仲介会社なら、2月から3月の時期は多忙を極めます。
以前は店頭で探していましたが、最近はネット上で好みの部屋を探すようになりました。
このように新築売買以外が主な仲介会社の領域になります。
これがさらに「住宅」と「事業用」や、「住居用」や「投資用」に分類されたりします。 「事業用」とは、いわゆる店舗やオフィス向け、テナント物件と呼ばれるものです。
「投資用」とは、自分が住んだり、店舗を構えたりするのでなく、誰かに転貸することを前提に買ったりする不動産です。
不動産仲介会社
三井系(三井不動産リアルティ)、住友系(住友不動産販売)、東急系(東急リバブル)などの旧財閥系の不動産仲介会社が業界上位に並びます。
独立系では「センチュリー21」や「長谷工」などが大手と呼ばれます。
一方で不動産仲介会社は、事務所スペースがあれば開業できる業態でもあるので、社員数5人程度の中小零細会社が、各地でまさに「山のよう」に存在します。
スーパーマーケットのように大手の寡占化が進み、中小零細がどんどん潰れていく業界もありますが、不動産業界はそのような事はありません。
人脈と知恵、営業力があれば、零細規模でも立派に大手と対抗できる業界です。
不動産仲介の仕事
不動産仲介の仕事は、ざっくり言えば「営業」と「仕入」に分かれます。
営業の仕事とは
客付けの営業の仕事
不動産を「買いたい人」「借りたい人」に対して、好みの物件を探して紹介、売買契約や賃貸借契約を締結するのが仕事です。
基本的な仕事の流れは「受け身」です。
ネットなどからの問い合わせや、店頭への来店に対して、ニーズに合いそうな物件を提案、案内する流れです。
ただこれでは、問い合わせが無い限りは仕事が発生しないので、過去の見込客リストへ架電フォローしたり、チラシをポスティングしたりして見込客をみつけます。
かなり地道な努力が求められます。
不動産の契約行為は、宅建士の独占業務、資格がないと契約行為を行ってはいけない事になっています。
しかし物件紹介や提案の仕事は、宅建資格が無くてもできます。
無資格者の場合、契約の段階になると、宅建資格者に代わりに依頼する事になります。
元付けの営業の仕事
営業の仕事は、何も客付けだけではありません。
家主さん側につき、元付けとしての立場から、買い手や借り手を探すのも営業の仕事です。
元付けの営業は、直接自分で客付けする場合もあれば、他の仲介会社へ物件を紹介し営業してもらう場合もあります。
客付け営業の場合は、問い合わせ客の好みにあった物件を紹介すれば良いのですが、元付けの場合は、その物件そのものを誰かに売る、貸す必要があり、売れ残りや空き物件はプレッシャーです。
どちらが良いとかはありませんが、私自身の経験で言えば、客付けに対して、元付けの立場が強く、客付けが紹介する客を客と思っていないスタンスの業者もいます。
「そんな事を言うなら貸してやらないよ」と、まるで自分の持ち物のような事を言ってくる業者もいます。
人気物件なら黙っていても売れる(貸せる)ので、変な勘違いがあるかもです。
いずれにせよ、「元付けが強い」ことを念頭に転職活動するのが良いでしょう。
仕入の仕事とは
家主側について「元付け」となる活動です。
個人のマンションや戸建て売買の元付けとなるのは、地道な活動です。
1件ごとにチラシをポスティングし、売却ニーズを掘り起こす事から始まります。
一方で、ビルオーナーなどの事業用不動産の元付けとなる場合は、地道に活動をしても成果に乏しく、以前からの関係性がものを言います。
仲介手数料
不動産仲介会社に払う手数料は、法律により上限金額が定められています。
売買の場合は売買金額の3~5%を売る側・買う側の双方から、賃貸の場合は賃料の1ヶ月分をどちらかから受け取ります。
ただし賃貸の場合も、販売協力金のような名目で、双方から1ヶ月分を受け取る場合が多いです。 例えば、3000万円(賃料15万円)の中古マンションの仲介をした場合、
・売買の場合・・・3000万円 × 3~5% = 96万円
・賃貸の場合・・・賃料1ヶ月分の15万円
となるので一般的には売買の手数料が高くなります。
一方で、売買より賃貸の方が売りやすいです。 安い手数料をたくさん稼ぐ賃貸か、高単価で量より質の売買か。
賃貸メインか、売買メインかで、不動産仲介の営業のスタイルも変わってきます。
不動産仲介の年収
不動産仲介は成果連動型の給与
不動産仲介の給与体系は稼いだ仲介手数料の一部が本人に分配される成果連動型が多いです。
中小企業の経営指標をみれば、不動産仲介会社の労働分配率(稼いだ利益の何%が人件費として分配されるかの比率)は約40%です。
先の事例で仲介手数料が96万円だとすれば、約38万円が給与として分配される計算です。
ただし、38万円の中には、固定給として既に支払っている給与、事務スタッフなど非営業の給与、社会保険料や福利厚生費の会社負担分も含まれているので、全額が営業マンの懐に入る訳ではありません。
ざっくりですが、仲介手数料の30%が本人の懐に入るイメージです。
不動産仲介会社の平均年収
厚生労働省が毎年発表している「賃金構造基本統計調査」の不動産取引業の給与データが参考になります。
この不動産取引業の中には、仲介会社だけでなく、マンションなどを開発する不動産デベロッパー、同じくマンションや分譲住宅を販売する不動産販売業も含まれているので、純粋な仲介会社の平均とは違いますが、全体で約600万円(40歳)の年収となっています。
詳しくは、こちらの記事に書いています。
ただし、不動産デベロッパー、不動産販売、不動産仲介の中では、おそらく仲介が最も平均年収が低いと考えられます。
最も高いのは不動産デベロッパーです。
なので仲介だけで平均値を出せば年収400~500万円レベルかと思います。
不動産社長はなぜ外車にロレックスなのか?
街の不動産屋さんの社長は、金ピカのロレックスにベンツのSクラス、小さな会社でも随分と羽振りが良いイメージがあります。
そのからくりは、
①街の不動産屋さんの社長の儲け方
②街の不動産屋さんの経費の使い方
があります。
① 社長の儲け方
社長の儲け方には2通りありまして、ひとつはここまでご紹介した仲介による手数料。
もうひとつは、自身で不動産を購入して転売、利ザヤを稼ぐ方法です。
不動産屋さんの元には、様々な不動産情報が入ってきます。
その中に美味しい物件情報があれば、他人に紹介せずに自分で安く買って、誰かに高く売ってしまえば、その利ザヤで大きく稼ぐことが出来ます。
不動産屋さん自身が、家主兼元付けとなる方法です。
3000万円の中古マンションを仲介しても96万円の手数料収入しか入りませんが、2500万円で仕入れて、4000万円で転売すれば1500万円儲かる訳です。
また言えば、土地を仕入れて、分譲して売れば、更に利益が乗ることとなります。
② 経費の使い方
社長1人に電話を取る事務員1人、2人だけの仲介会社もあります。
そんな会社なら事務員の給料1人分以外に経費もほとんどかかりませんので、先の1500万円の儲けがそのまま利益として残ります。
自ら家主となって利ザヤを稼ぎ、事務員と2人で経費をかけない。
美味しい情報をいち早く取り込んで、上手くやり繰りすれば、ベンツ&ロレックスは案外と楽勝です。
不動産仲介の転職方法
そんな不動産仲介会社への転職は、大手も中堅も中小も、意外にハードルは高くないです。また40代以上の中高年にも、広く門戸が広がっています。
ハードルが高くない理由は次の通り。
・成果主義で離職率が高く、常に人員補充をしている
・成果主義のため、会社側の雇用リスクが低い
・成果主義のため、会社側の人件費負担が少ない
不動産仲介会社への転職は、転職サイトか転職エージェントからとなります。
自分の目で探したいなら転職サイト。
おすすめの会社を紹介して欲しい、自分で応募するのが面倒なら転職エージェント。
また40代以上の中高年が業界未経験から転職エージェントが良いでしょう。
サービスはどこでも問題ないですが、大手の方が求人件数も多く、安心です。
次のような所が無難でしょう。
不動産業界を専門にした転職支援サービス【宅建Jobエージェント】
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転職エージェントの解説は、こちらにまとめました。
https://kotobuki.blog/1911/
売買か賃貸か?
ぶっちゃけ仕事の難易度でいえば売買です。どちらに転職するかは個人の自由ですが、賃貸専門の仲介会社から、売買、特に新築を扱う仲介会社への転職はハードルが高いです。
業界未経験からの転職の場合、まずは売買を基本に考えるのが良いかとおもいます。
不動産仲介で独立開業
事務所と電話があれば可能な不動産仲介会社の独立開業はハードルが低いです。
ただし仲介会社として登録するには宅建士の免許が必要なので、無資格者の場合は宅建資格の取得が必要です。
厳密に言えば、宅建資格を本人が持っていなくても開業は可能ですが、そこは賢いやり方とは言えないので、やはり資格をとった方がよいです。
宅建資格は合格率15%、400~500時間の学習時間で取得できますので、仲介会社で働きながら実務を経験しつつ、資格の勉強をして、1年後に取得するのが良いでしょう。 1年間を遮二無二に頑張れば、実現可能な目標です。
宅建士関連のこちらの2記事、ご一読いただいて損はないはずです。
https://kotobuki.blog/1325/
https://kotobuki.blog/2004/
本日はここまでとします。 最後までお付き合いいただきありがとうございました。