不動産業界へ転職を考える方、いままさに転職活動中の方へむけ、不動産会社の平均年収を整理しました。
元データは、「賃金構造基本統計調査」の2019年調査版です。
賃金構造基本統計調査は厚生労働省が毎年実施しています。
約2000万人を対象としている、最も大規模で信憑性の高い調査です。
私自身も人事コンサルタントとして企業の給与制度を設計する際は、賃金構造基本統計調査のデータを参考に行っていました。
今回の記事では、単に不動産業界の平均給与を紹介するにとどまらず、更に一歩踏み込んで、平均年収から見る狙い目企業や、その転職方法について書いています。
不動産業界の分類
賃金構造基本統計調査では、不動産業は「不動産取引業」と「不動産賃貸業・管理業」の2つに分類されています。
不動産取引業・・・不動産(土地・建物)の売買や交換、あるいはその代理や仲介を行う業種のこと
不動産賃貸業・管理業・・・不動産(土地・建物)の賃貸・管理を行う業種のこと
不動産業界の平均月給・平均年収
「不動産取引業」と「不動産賃貸業・管理業」の平均月給と年収は次の通りです。 なお平均月給の中には、基本給の他に各種手当、残業手当や各種手当、営業報奨金などが含まれています。通勤交通費は含まれていません。 年収は、平均月給に12を掛けたものに、賞与や特別手当などを加えて計算しました。 詳しくは、2019年度賃金構造基本統計調査へ
不動産取引業の平均月給・平均年収(男女・企業規模計)
月給(諸手当含む) | 年収 | |
20~24歳 | 26.3万円 | 345万円 |
25~29歳 | 31.9万円 | 480万円 |
30~34歳 | 36.7万円 | 580万円 |
35~39歳 | 41.7万円 | 668万円 |
40~44歳 | 43.4万円 | 685万円 |
45~49歳 | 46.1万円 | 732万円 |
50~54歳 | 53.0万円 | 851万円 |
54~59歳 | 48.3万円 | 775万円 |
計(平均39.0歳) | 39.3万円 | 611万円 |
不動産賃貸業・管理業の平均月給・平均年収(男女・企業規模計)
月給(諸手当含む) | 年収 | |
20~24歳 | 23.4万円 | 318万円 |
25~29歳 | 27.3万円 | 398万円 |
30~34歳 | 30.3万円 | 445万円 |
35~39歳 | 33.8万円 | 506万円 |
40~44歳 | 36.5万円 | 561万円 |
45~49歳 | 37.0万円 | 570万円 |
50~54歳 | 38.9万円 | 603万円 |
55~59歳 | 38.8万円 | 597万円 |
計(平均45.3歳) | 32.2万円 | 480万円 |
不動産業界の年収事情(平均データより分かること)
平均データより分かることは次の通りです。 考察の裏付けは、2019年度賃金構造基本統計調査も確認ください。
不動産取引業の方が不動産賃貸業・管理業より高年収
不動産取引業の平均年収が612万円に対し、不動産賃貸業・管理業の平均年収は480万円。平均年収で130万円の違いは、かなり大きいです。
不動産取引業の方が不動産賃貸業・管理業より若い
不動産取引業の平均年齢が39歳の一方、不動産賃貸業・管理業の平均年齢は45歳と、平均年齢で5歳以上の差があります。
不動産取引業は30代で平均年収が上昇するが、不動産賃貸業・管理業は幾つになっても大きく変わらない
20~24歳の平均年収は、不動産取引業が345万円に対して、不動産賃貸業・管理業が318万円と大差はありません。 ところが35~39歳の時点になると不動産取引業が668万円と20~24歳時点と比較して約2倍の年収となるのに対して、不動産賃貸業・管理業のそれは約500万円。 両者の間に約170万円の格差がついています。
不動産取引業は企業規模が大きいほど平均年収が高いが、不動産賃貸業・管理業は企業規模は関係ない
不動産取引業で1000人以上規模の平均年収は673万円、100人規模未満は479万円、その差は約130万円。
一方で不動産賃貸業・管理業は、1000人以上規模の平均年収は523万円、100人規模未満は444万円、その差は約80万円です。
同じ不動産業界でも平均年収で100万円以上の開き。 データだけをみれば、「30代から高年収が欲しいなら、出来るだけ大規模な不動産取引業」という事になります。
不動産取引業に含まれる業種
不動産取引業に入る業種は次のような会社です。 大きくは、自社で開発した不動産を売買する会社と、他人の不動産の売買や賃貸を仲介する会社に分かれます。
・建売業・・・新築の戸建て住宅を専門に開発・販売をする事業
・マンション分譲業・・・新築マンションを専門に開発・販売する事業
・不動産仲介業・・・宅建業とも呼ばれます。土地建物の売買・賃貸の仲介を行う事業
不動産取引業の仕事内容
建売業やマンション分譲業の仕事
基本的には営業の仕事です。 戸建て住宅にせよ分譲マンションにせよ、モデルルームに来場したお客様に営業をするのが仕事です。
もちろん、モデルルームに勝手にお客さんが来るわけがなく、モデルルームに来てもらうための電話営業やチラシのポスティングなども行います。
通常、モデルルームでは数名がチームを組んで仕事をすることになりますが、新人はひたすら電話とポスティングが役割になるでしょう。かなり地味で根気がいる仕事です。
ただし1件契約が決まれば数千万~数億円の金額となるので、営業への成果報酬も多額となります。 不動産取引業の平均年収が高い理由です。
不動産仲介業の仕事
不動産仲介業の場合はモデルルームがありません。
その代わりに店舗を構えて来店したお客様に希望にあった物件を紹介するのが仕事になります。
最近はインターネットで希望の物件を探す人が増えてきたので、無店舗で営業することも出来るようになりました。 いずれにせよ建売業などと比べると「待ちの営業」スタイルとなります。
不動産仲介業の報酬は、仲介が成立した際に受け取る仲介手数料です。
通常、賃貸の場合なら家賃1ヶ月が基準となるので、例えば月7万円のワンルームマンションなら手数料は7万円です。
この一部が営業の報酬となるので2万円前後?
数千万円規模の契約を行う建売業やマンション分譲業と比べ、やや地味目の印象です。
したがって、不動産取引業の中では仲介業の平均年収はやや低くなります。
*こちらもおすすめです
不動産賃貸業・管理業に含まれる業種
不動産賃貸業・管理業に含まれる会社は、次の通りです。
・不動産賃貸業・・・自社で保有する不動産(事務所・店舗・土地など)の賃貸を行う事業
・貸家業・・・自社で保有する住宅や部屋を賃貸する事業
・不動産管理業・・・ビルやマンションの持ち主に代わり不動産の管理を行う事業
先に紹介した不動産仲介業は、不動産賃貸業や貸家業が保有する不動産の賃貸の仲介を行います。
このように見ると、不動産取引業がより営業的な仕事、不動産賃貸業・管理業はより管理的な仕事であるのが分かります。
この違いが、業界の平均年収の差になってあらわれます。
なぜ不動産取引業の年収が高い?
簡単に言えば、不動産取引業の方により価値があるからです。
不動産に限らず、モノやサービスの価格は需要と供給のバランスで決まります。
不動産でいえば、空き家問題や商店街のシャッター通りからも分かるよう、供給が需要を上回っています。
したがって、不動産を持つことより、欲しい人を見つけて来て、売ったり貸したりする方が難易度は高く、価値があるのです。
起こり得ないとは思いますが、仮に需要と供給のバランスが逆転すれば、平均年収も逆転するでしょう。
不動産管理についても同じことです。
不動産を管理するのに特別なノウハウと技術が求められ、管理することに希少価値があるなら不動産管理業の平均年収は高くなります。
実際、東京の一等地などの希少性が高い土地や住宅なら、所有しているだけで価値があるので、そこで働く人の給与は自然と高くなるでしょう。
高年収の不動産業界へ転職するには
ここまで書いた通り、高年収を狙うなら戸建て住宅の販売業やマンション分譲業がおすすめです。
しかも一部の大手開発デベロッパーをのぞき、さほど難易度は高くありません。
営業ノルマのプレッシャーがあり、成果の出る人とそうでない人の差が明確で、人の入れ替わりが激しい業界だからです。
探し方は転職サイトを使って自分で探すか、転職エージェントからの紹介に頼るかです。
リクナビネクストのような転職サイトを使うなら、「不動産」でカテゴリー検索しつつ、フリーワード「戸建て」「建売」「分譲」「マンション分譲」などで絞り込んでみましょう。
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次に転職エージェントを使うなら、希望条件にあった紹介を待つだけです。
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転職エージェントは、マイナビ、リクルートなどの大手からと、不動産業界専門エージェントから、それぞれ1つないしは2つずつくらい選びましょう。
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今日はここまで。最後までありがとうございました。