M&A仲介会社へ転職を考えている人の「M&A業界へ転職するメリットとデメリット知りたい。業界未経験だけど、自分でも大丈夫だろうか?」こういった疑問に答えます。
本記事の内容
・M&A業界に転職するメリットとデメリット
・M&A業界へ転職する流れ
この記事を書いている私はコンサルタントとして20年のキャリア。
その後は事業会社で役員をしています。
コンサル時代はクライアントのM&A経験、いまの会社でも企業買収のプロジェクトに携わりました。
M&A仲介会社のコンサルタントと頻繁に仕事をしているので、より身近にこの仕事を見てきた立場。M&A業界への転職のメリットとデメリットをまとめました。
M&A業界に転職するメリットとデメリット
最初に結論を箇条書きでまとめます。
メリット
① 成長業界である
② 給料が高い
③ 専門スキルが身につく
④ 独立しやすい
⑤ 実力主義である
デメリット
① 実力主義である
② 仕事がハード
③ 常に勉強
メリット① 成長業界である
これ最重要です。
「何の仕事をするか」より「どこの業界で仕事をするか」が実はとっても大切。
日本全体が成長している時代なら、ひとつの会社でコツコツ努力していれば、結果もそれなりにでて、給料も上がりました。
ところが、いまは国内の多くの産業で成長が止まり、努力しても結果に結びつかないし、元から居る人達がすでに美味しい密を吸ってしまっているので、後発組には何も残っていません。
仕事で結果を出すのは、本人の頑張り以上に、属する業界で決まるという残念な事実。
もちろん成長業界には、優秀な人が集まり、その中での競争は熾烈です。
でも衰退業界の中で頑張り消耗するより、結果が出やすいのは間違いないです。
M&A業界は、現時点も、これからも成長業界です。
成長業界である理由は次の通り。
・中小企業の後継者難
・M&A手法の一般化
日本企業の90%以上が中小オーナー企業。
これら企業の多くは日本の成長期に創業した会社。
経営者が60歳、70歳となり、ちょうどバトンタッチの時期を迎えています。
ところが少子化、価値観の変化で後継がいない。
これまでやむなく廃業していた中小オーナー企業の問題を解決する手法としてM&Aが定着したのは歴史浅く、ここ10年くらいです。
株式会社250万社のうち、約60万社が後継者不在、誰かに会社を引き継いで欲しいと考えている。一方で、M&Aの件数は年間3000件程度。全体の0.5%を占めるにすぎず、M&Aのマーケットは、今後も拡大成長を続けると予想されています。
これから伸びる業界で、生きることが何より大切ですね。
メリット② 給料が高い
平均年収 | 平均年齢 | 勤続年数 | |
日本M&Aセンター | 1414万円 | 35.1歳 | 3.8年 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 3109万円 | 31.2歳 | 3.15年 |
ストライク | 1344万円 | 34.8歳 | 2.3年 |
M&A上場3社の平均年収が上記の通り。
業界平均のデータはありませんが、これに近い線でしょう。
転職にあたり給料は高いに越したことはないです。
M&A業界上場3社の比較は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
https://kotobuki.blog/1045/
M&A業界の給料が高い理由は、「高い仲介手数料」と「アドバイザー1人当りの生産性」です。
手数料が高い理由は次の通り。
・M&Aは社長が意思決定するトップ案件
・M&Aの価値は値段で決まらない
・競合が少なく価格破壊が起きにくい
競合が増えれば手数料が下がってくるかもですが、価格が安いから選ぶというサービスではないので、価格破壊は起きにくいと考えて間違いないです。
従業員30名くらいの中小企業のM&Aなら、1億円程度の手数料収入です。
不動産や金融もそうですが、単価の高いビジネスほど給料が高くなる傾向にあります。
給料が高いと精神が安定しますし、仕事への前向きさや責任感も増し、成長への努力も惜しみません。
乱暴な言い方かもしれませんが、給料の高い会社の方が人間的に魅力のある人が多いように感じます。
メリット③ 専門スキルが身につく
売り手企業を探す→企業評価→買い手企業を探す→売買合意へ導く。
これが基本的なM&A仲介の流れ。M&Aの専門スキルは持ち運びが可能で、どこへ行っても使えます。
身につけたスキルを持って転職がしやすいのが、M&Aアドバイザーの特徴です。
経験を元に、より大手企業への転職も可能です。
M&Aの経験で築いた人脈も転職の時の武器となります。優良な顧客を引き連れて、他社へ移籍なんてことも。
*優良な顧客とは、たくさん買ってくれる企業。買収意欲の高い企業です。
メリット④ 独立しやすい
こちら専門スキルが身につくとも似ている話です。
M&Aコンサルタントは独立にコストがかかりません。
この業界、個人にクライアントがつく傾向にあるので、何年か経験を積んだ後に人脈をもとに独立する人も多いです。
業界内の横のつながりもあるので、個人でもネットワークの中で充分に仕事ができるイメージです。
メリット⑤ 実力主義である
良い意味で結果が全て。ベテランも新人も関係なく、同じ土俵で勝負するので、経験に関係なく、結果を出した人が評価されます。
裏を返すと、結果を出せない人には厳しい世界とも言えますが。
でも結果さえ出していれば文句も言われませんし、上司や先輩に気を使いながら仕事をすることもないです。
大きな仕事を任されて、自分の裁量で判断できる、自由度の高い仕事です。
続いてデメリットを見てきましょう。
デメリット① 実力主義である
実力主義を裏返すと「成果がシビアに評価される」です。
M&A業界は固定給が意外なほど低く、その給料の大半は成果によるインセンティブです。
結果を出せない人の給料は一向に上がりません。
それどころか会社にも居づらくなるので、退職せざるを得ない雰囲気になります。
とはいえ、業界共通の専門スキルが身に付きますし、その会社の雰囲気に「あう」「あわない」で結果が左右されるケースもあるので、その会社では結果が出ないと感じたら、早々に見切りをつけて別のM&A会社へ移籍するのは大いにありだと思います。
デメリット② 仕事がハード
仕事がきついのは嫌というなら、M&Aアドバイザーはやめた方が賢明です。
ウソ偽りなく、仕事はハードです。
どこと言いませんが、付き合いのあった大手M&A仲介会社も、毎晩終電、時には徹夜。休みの日は自宅で鬼仕事。
高い年収と引き換えに、自分の時間を全て仕事に捧げている感じです。
高額年収者ほど、たくさんの案件を抱えますので、激務はM&Aの仕事をしている限り続きます。
とはいえ、こういう生き方も若いうちはアリなのかなと個人的には思います。
激務と引き換えに、普通の人の2倍、3倍成長できますし。
スキルと人脈をさっさと築いて独立すれば、自分のライフスタイルにあった働き方ができるかも。
デメリット③ 常に勉強
M&Aアドバイザーは勉強することも多いです。
M&Aに関する法律や会計の専門知識はもちろん、クライアント企業の業界のことも。
付き合う相手が企業経営者になるので、いろんな話題にも対応する必要があります。
年上の経営者から信頼を勝ち取るために、常に勉強し、自分自身を成長させ続けることが必要です。
とはいえM&A業界にいれば、経営者に囲まれて仕事をするので、自然とこういった知識や意識が身に付く環境です。
M&A業界へ転職する流れとは
M&A業界の転職において、未経験であることは気にしなくても大丈夫です。
未経験なのは、どうしようもないですし、入社してから経験を積めば良いわけです。
採用する側も、ヘッドハンティングの特別枠を除けば、特に経験者だからって優遇することはありません。毎年、新卒学生も採用していますし。
ざっくりした言い方をすれば「総合力」で判断します。
M&A業界へ転職する際に、まずやるべきこと
転職サイトや転職エージェントに相談すること。
M&A業界は成長を続けており、常に新しい人材を求めているので、思いのほか転職ハードルは低めです。
転職サービスはいくらでもありますが、オススメを下記にまとめます。
おすすめな転職サイト・転職エージェント
業界最大手。日本最大の転職サイトなので案件が豊富です。M&A業界の求人もたくさんあるので、まずはここに登録しましょう。
こちらも大手、定番のマイナビです。20代向けの案件や、伸び盛りなベンチャー企業の案件が多く、登録して損しないはずです。
こちらも大手転職エージェント。若手第2新卒向けの営業系求人が多数なので、勢いのあるM&A仲介会社に巡り合うチャンスが多いです。
M&A業界への転職に資格は必要か?
国家資格なら中小企業診断士、民間の資格ならM&Aスペシャリスト資格(日本経営管理協会主催)などがあります。
でも、ぶっちゃけ資格は不要です。
採用も、資格があるから有利とはならないでしょう。
資格は全くの未経験者が、業界のことをゼロから知るには役に立つもの、その程度に考えれば良いです。
M&Aスペシャリスト資格は、3日間の講習を受けた上で試験を受験。講習受ければ、だいたい合格です。
講習費用と受験料で88,000円なので…私なら受けないですけどね。
M&A業界に転職するまえに読むべき本【3冊】
最後に、M&A業界を知っておくために、おすすめの本3冊をまとめました。
こちらも業界大手、M&Aキャピタルパートナーズの創業経営者が書いた本。創業から8年でマザーズに上場した軌跡が書かれています。業界の熱を感じることのできる本です。
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M&Aの流れが小説仕立てで構成されているので読みやすいです。著者はM&Aを扱う弁護士、仲介会社の書いた前の2冊とはまた違った視点で書かれているので、こちらもおすすめです。
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このあたりは専門スキルというよりは、基礎教養的な位置づけの本ですので読みやすいです。ぜひ一読してみてください。
というわけで、今回は以上となります。
【再掲】M&A業界へおすすめの転職エージェント