この記事では転職活動中の児童発達支援管理責任者(通称:児発管)の方へ、平均的な給料・月給、今後の動向についてまとめています。データや事実を駆使して、できるだけ論理的に、分かりやすく解説しました。
私自身、人事コンサルタントとして20年以上のキャリアがありますので、このような事は専門領域です。
「児発管(児童発達支援管理責任者)」のことがよく分からないという方は、次に少し解説を入れていますのでご覧ください。「よく知っているよ」という方は読み飛ばして、先に行ってもらって大丈夫です。
児童発達支援管理責任者とは
発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)他、これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点で共通しています。
「じっとしていられない」「文字を読むのが難しい」「言葉の遅れ」「周りの子どもとコミュニケーションが取れない」などの症状が主に挙げられますが、いくつかのタイプの発達障害が重なることも珍しくなく、そのため同じ障害でも、まったく違って見えることがあります。
個人差がとても大きいのが「発達障害」の特徴です。

いま発達障害を持つ子ども達が増加していると言われています。
その背景として、アスペルガーやADHDが社会で認知されだしたという事も関係するでしょう。ひと昔前なら、「ちょっと変わった子」で片付けられていた子が、今から思えば発達障害だったのでしょう。
特に最近は、芸能人や有名人が発達障害であることをカミングアウト。芸術家や起業家には発達障害が多いとも言われており、その特性を活かすことで特別な才能が開花する事から、以前よりポジティブに受け入れられてもいるようです。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツさん、スピルバーグ監督も発達障害と。トム・クルーズさんは学習障害の一種で映画の台本が読めませんし、発明王エジソンや、音楽家のモーツァルト、物理学者アインシュタインも発達障害と言われています。
児童発達支援管理責任者とは障害をもって生き辛さを感じる子供たちや、その家族が自信をもって生きていけるようサポートをする仕事です。
具体的には保護者への相談支援、子どもの個性に合わせた個別支援計画の作成、他の指導員への助言や指導、そしてアセスメントやモニタリングです。
児童発達支援管理責任者の仕事のやりがいは、ユニセフの子供白書によると、人間の脳は6歳までに大半が創られると言われます。欧米諸国で義務教育の開始年齢を早めているよう、早期教育の重要性は世界中で認識されています。
子どもへの療育を通じて、成長を実感できる喜びは何物にも変えられない喜び。
保護者との間に生まれる信頼関係、成長を分かち合える喜び、頼られ、感謝されること、これらも児童発達支援管理責任者のやりがいです。
児童発達支援管理責任者の平均給与
調査方法
・調査日時:令和2年6月
・調査対象:保育士メドレー
・調査方法:「児童発達支援管理責任者」の求人情報を無作為に抽出。給与幅がある場合は最低金額を採用
・調査サンプル数:各エリアで100件
東京圏(東京都・神奈川・埼玉・千葉)、北関東(茨城・群馬・栃木)、京阪神(大阪・京都・兵庫)にエリア分けし、それぞれから100件の求人情報を無作為に抽出した平均値です。
東京圏 | 平均272,642円 |
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北関東 | 平均253,442円 |
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京阪神 | 平均250,625円 |
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東京圏が他と比べて約2万円高くなりました。
児発管の給与は募集する法人によりバラつきがあります。
特に北関東は栃木県が東京とほぼ同じ水準に高いですが、茨城県や群馬県はかなり低めになっています。
調査した中では月給375,000円のグローバルキッズメソッドが最も高く、次に370,000円のコペルプラスが続きます。グローバルキッズメソッドは栃木県で複数の事業所を展開する企業、こちら1社で北関東の平均給与を引き上げています。コペルプラスは全国展開です。
児童発達支援管理責任者の給料は何で決まるのか?
給料は何で決まるのか?
児発管に限らず一般的な話ですが、求人募集に出る給料は次のデータを元に決まっていきます。
・求人倍率
・利益率
・世間相場
求人倍率とは、仕事を探している1人に対して、何件の求人があるかを示すもの。求人倍率が高いと、人手不足の状態であり給与も高くなります。令和2年1月の求人倍率(全体)は約1.6倍。
求人倍率が高くても、企業が儲かっていなければ高い給料は払えませんので、次に給料は利益率にも影響を受けます。
また利益率は業界毎に決まっていたりします。儲かっている業界、儲かっていない業界です。
介護や保育の業界は、国が利用料を決めているところがあり、大儲けできない体質にあり、いくら求人倍率が高くても給与は低めになります。
一方で、不動産やM&A、AIなどの業界は利益率が高く、給与は高めです。
地域の会社、ライバル会社が幾らで募集しているかも気になる点ですので、世間相場にも影響を受けます。
案外知られていませんが、「どの業界に身を置くか」で給料が決まってしまう事実があります。
児発管の給料はどうなのか?
児発管を上の指標に当てはめて考えると、分かりやすいです。
まず求人倍率について
児発管の求人倍率はデータで発表されていませんが、次の2つの事実は参考になります。(2022年5月時点)
・児発管が働く事業所(児童発達支援や放課後等デイサービス等)の数 約17,000件
・ジョブメドレーへの児発管の求人数 約7800件
全国で40~50%の事業所が募集しているとすれば、「尋常でないレベルで人手不足」です。
次に保育士の資格や職務経験を持った児発管が多いことから、保育士の求人倍率は児発管のそれを推測するのに役立ちます。
・保育士の求人倍率 2.92倍(2022年1月)
全体の求人倍率に比べ倍以上。1人の求職者に対して3件近い事業所が手を挙げる状態。
ここから推測しても、児発管の求人倍率が高いことが分かります。
次に利益率について
結論から言えば、児発管が働く職場の利益率は高いです。
その根拠を、次の2つの事実で説明します。
児発管が働く障害児支援の事業所は国からのサポートで事業を運営します。
そのため介護や医療と同じく、利用料は国が決めています。
・介護(デイサービス)の報酬単価(基本部分) 645単位
・児童発達支援の報酬単価(基本部分) 827単位
こちらは利用者が1日8時間、それぞれのサービスを利用した場合の報酬です。
高齢者を受け入れるより、障害児童を受け入れる方が約1.3倍の売上があることが分かります。専門的な話になりますが、これに各種の加算がつき、最終的には1.5倍くらいの開きになります。
その結果、介護と障害児支援のそれぞれ上場企業の利益率を比較します。
・ツクイ(介護) 利益率4.6%
・リタリコ(障害児支援) 利益率7%
これを見ても、児発管が働く障害児支援の業界は利益率が高いことが分かります。
つまり児発管は求人倍率で見ても、利益率で見ても高い給与になることが分かります。
児童発達支援管理責任者の給料は今後どうなるのか?
こちらは中期的と長期的に分けて考える必要がありますが先に結論を書いておきます。
中期的:給与水準は上昇する
長期的:人手不足は解消され二極化する
中期的に児発管の給料はどうなるか?
結論に書いた通り、当面は児発管の給料は上昇します。
理由は、業界の人手不足は当面続き、給与が決まる3つ目の要因「世間相場」で業界の給与水準が見直されているからです。
先のグラフ(東京圏)を見ても分かるよう、募集給与25万円台の法人と30万円台の法人が多いですね。いま25万円で募集している法人も、いずれは30万円程度まで引き上げざるを得ないでしょう。東京圏で平均30万円を超えるレベルまで上がるでしょう。
長期的に児発管の給料はどうなるか?
こちらも結論に書いた通りですが、いずれ人手不足の問題は解消されると思われます。
理由は、実務経験をクリアする人が今後大量にでてきて児発管の人数が増えてきます。
となると、現状の求人倍率が下がることが予測され募集給料は下がるでしょう。
児童発達支援管理責任者を目指すなら今が最後のチャンスと断言できます。
それと共に児発管の専門性やスキルにより、事業所の評判が二極化されるでしょう。
いま地域で評判の発達障害専門外来のある病院は、初診を受けるまで6ヶ月、あるいは初診を受け付けていないクリニックもあると聞きます。
専門性が高く、質の高いサービスが評判の事業所(児発管)には、病院と同様に問い合わせが殺到、そのような児発管には高額でヘッドハンティングされるでしょう。
これまでのように児発管になることがゴールでなく、専門性を伸ばし、児発管としての価値を高めていくかが問われることになりそうです。
児童発達支援管理責任者の転職方法
児発管として転職するなら、ここまでご紹介した通りジョブメドレーがおすすめです。
理由は児発管の求人数が最も多く、都市部に限らず全国の情報が掲載されているからです。
会員登録(無料)をしておけば、お住まいの近くで求人や新規オープンがあった場合に、メールやLineで通知が届くので便利です。
今回、高額給与で募集していたグローバルキッズメソッドやコペルプラスも、ジョブメドレーに掲載されています。

ジョブメドレーの上手な活用方法は、こちらに詳しく書いています。

一方、転職エージェントに登録して紹介を受ける方法は、私は個人的にはお薦めしません。
理由は、急な退職などで本当に困っている所や、自力では採用できない所が利用する傾向にあること。何か事業所自体に問題があることも疑う必要があるでしょう。
児童発達支援管理責任者についてより知るために
児発管について、幾つかの参考記事を書いています。より深く知るにはこちらもおすすめです。


児童発達支援について参考書籍
児童発達支援大手2社(LITALICO、コペルプラス)より、それぞれ書籍が出版されています。
企業研究を進める上では、こちらも参考になります。
【タイトル】 発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。
【内容】発達に課題のある子どもたち8000人が通い、さらには待機児童が何千人もいるという人気の教室「LITALICOジュニア」。著者は「教室に来る子はみな独創的で、将来の可能性を感じさせる子たち」と語る。本書では、発達に凹凸のある子の伸ばし方、また、多様な人が活躍できる「障害のない社会」のつくり方までを提唱していく。
【タイトル】 「発達障害」という個性 AI時代に輝く ― 突出した才能をもつ子どもたち
【内容】本書では、幼児期の教育に焦点を当て、「潜在能力を引き出す」「才能を伸ばす」ヒントをまとめています。発達障害の子どもたちも、社会で活躍できる可能性を持っています。自らも発達障害であるという著者が、「発達障害の可能性を多くの人に知ってもらいたい」と書き上げた一冊です。
今回は、ここまで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。