安倍首相が「世界で最も手厚いレベル」と自信を示した雇用調整助成金。
実際の運用状況は、世界一とはほど遠い、お粗末な内容です。
中小企業社長の悲痛な叫び
知り合いの社長のSNS投稿を一部抜粋して紹介します。
これが雇用調整助成金の実態です。
まず4月初旬に労働局に相談の予約を入れ、3週間後に怒号に溢れるハローワークに行く。出て来た担当者も「自分たちも理解出来ていない部分が多くて」と、「70種類の提出書類が30種類に簡素化されました」と申し訳なさそうに言う。
社員それぞれ3年間のタイムカードから平均業務日を出し、それぞれの給与から平均賃金を算出。そこから30有余の書類の書き方とにらめっこ。
資料を揃えて申請したとしても、3・4月の支給は8月頃の予定。しかも単月ごとの申請だからロスタイムは半年。「売上減の現状で給与を半年間払い続けろ」ということ。最高日額8.330円だから満額申請受理されても実際の約半分しか給付されない。
これが時の総理大臣が胸を張って「必ず雇用を守る」と大ウソをついている実態。
意地でも受給するぞと自分を鼓舞するが、日々何回か心が折れる。
こちらの社長は、それでも何とか助成金を受けようと日々奮闘している姿がうかがえます。
雇用調整助成金以前に、そもそも休業手当はない
ところが世の中には、そもそも休業手当を支給しようとしない企業も存在する訳で、昨日(令和2年5月15日)は、こんなニュースが舞い込んできました。
非正規インストラクター(指導員)に休業手当を一切支払ってこなかったコナミスポーツが指導員らの抗議で、一転して3月までさかのぼって支払うことを表明。「バイトには休業手当出さない」状況が蔓延しており、経営者の責任感のなさと共に政策も欠陥が露呈しています。https://t.co/BLMPt1eILA pic.twitter.com/f75RCVd2cO
— 東京新聞けいざいデスク (@tokyokeizaibu) May 16, 2020
コナミスポーツは全社員6200名のうち9割を占める非正規社員に対して、手当無しで休業させた事がニュースとなりました。
その後、5月15日にはホームページ上で3月まで遡り全額手当を支給することを発表。

一件落着と言いたいところですが、コナミって東証一部上場企業ですよね。
上場企業のコナミがこの状態。正社員であろうがパート社員であろうが、会社都合による休業の場合、休業手当を支給しなければいけません。
労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において「使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定めており、ここでいう労働者にはパート社員も含まれます。
思うにコナミはほんの氷山の一角。
充分な内部留保も持たず、壊滅的な打撃を受けている中小企業には、そもそも休業手当を支給する体力も残っていないのではないでしょうか。
お分かりの通り、雇用調整助成金とは企業が休業手当を支給した一部分を国が負担しましょうというもの。そもそも休業手当を企業が払おうとしない、休業手当が助成されても入金が半年後では、誰も救うことが出来ない。
そんな中で登場したのが「みなし失業給付」です。
みなし失業給付
首相は5月11日の参院予算委員会で、休業手当を受け取れない人がいる問題について、「雇われている方の立場でスピード感を持って対応していきたい」と答弁しています。
これが政府が検討を始めた「みなし失業給付」。
休業中に、国が労働者へ直接失業手当を支給するというものです。
もともとは東日本大震災の時に作られた、「災害時における雇用保険の特例措置」を参考に、さらに一歩踏み込んだ内容になりそうです。
まだ具体的な姿が明確になっていない「みなし失業給付」。
休業を余儀なくされて生活に不安を抱えている多くの労働者を支える仕組みになり得る可能性を持っています。
どのような手順でもって給付されるか、その全貌は分かりません。
そもそも社員が失業給付を受けるには、会社が休業状態にあることを認める必要があるが、それはどのように進めるのか。
雇用調整助成金の申請は、支給までに並大抵でない労力と時間がかかっているが、今回の手当はどうか。
雇用調整助成金の特例措置は失敗に終わっていることを政府は素直に認め、今回こそスピード感を持って進めて欲しいものです。