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コロナ緊急事態宣言の中、失業給付について再確認

コロナ緊急事態宣言が出されたちょうど同じ頃、東京のタクシー会社ロイヤルリムジンに関するニュースをご覧になられた方は多いでしょう。

 

都内を中心にタクシー事業を展開するロイヤルリムジングループが新型コロナウイルスの感染拡大による業績の悪化を理由に、グループ会社の従業員およそ600人を解雇する方針を決めたことが分かりました。(中略)ロイヤルリムジンは「緊急事態宣言が出され、今後さらに売り上げが落ち込むことが予想され、休ませて休業手当を支払うより解雇して雇用保険の失業給付を受けたほうがいいと判断した。現状では事業を継続させるのは1年ほどが限度だが、感染拡大の影響が終息すれば再雇用したい」としています。(中略)従業員に予告なく突然、解雇を通告したことについては「想定を超えるスピードで売り上げが悪化していて、これ以上従業員の給料が下がれば解雇した際の失業給付も減ってしまうので今しかないという判断だった」と述べました。(NHKニュース 2020年4月8日 18時36分)

 

同社の解雇については、その後に一部を撤回していますが、話題のニュースを教材に「いまさら聞けない失業保険」について解説します。

コロナウイルス感染拡大の影響により、将来の見通しが立たない我々が、もしもの時のために、詳細を知っていて損のない制度です。上の引用記事の太字部分を中心に掘り下げます。

 

この記事を書いている私は、人事コンサルタントとして20年のキャリア、今は事業会社で役員をしています。

それではさっそく始めましょう。

 

失業給付(失業手当)とはどのような制度か?

失業給付の対象は?

 

雇用保険の加入者が対象です。ほとんどのサラリーマンは加入していますが、フリーランスや経営者は対象外です。

失業給付は失業状態にあり、かつ就職活動をしている人に支給されます。

退職理由は自己都合や会社都合いずれでもかまいませんが、給付を受けるスケジュールや金額は、それぞれ違います。

 

一般的に、会社都合による退職とは、下記の理由による退職が該当します。

・会社の倒産やリストラ

・解雇(自らの責による懲戒解雇を除く)

・職場の上司・同僚等からの、いじめや嫌がらせによる退職

・勤務場所や勤務時間、仕事内容などが労働契約締結時に明示されたものと著しく違っていることによる退職

・賃金の大幅カット又は給与未払いによる退職

・会社からの退職勧奨(早期退職優遇制度による退職は含まれず)

・労働契約が更新されない(雇い止め)

管理職のセクハラによる退職、人事的な嫌がらせによる退職なども含まれて、会社都合の退職は案外に幅広いです。

 

今回のロイヤルリムジンの事例では、会社の業績不振による一斉解雇に該当するため、「会社都合による退職」が当てはまります。

 

 

失業給付はいつ受け取れる?

失業給付の受給開始日は会社都合と自己都合、退職理由により変わります。

 

会社都合の場合・・・申請の後、失業認定日より5営業日後に給付されます

自己都合の場合・・・申請の後、3か月の給付制限期間を経て、それでも失業状態にあると認定された5営業日後に給付されます

 

今回のロイヤルリムジンの事例では、「会社都合による退職」であるため、受給までのスケジュールは最速2週間、自己都合より大幅に早いという事です。

 

 

どのように失業給付を受けるのか?

失業手当を受けるまでの流れは、大きく5つのステップにわかれています。

極限までシンプルに書けば、「申請・説明会・失業認定日に、それぞれハローワークへ行く」というのが受給までの流れです。

 

ステップ①:離職証明書の確認と離職票の受領(在籍していた会社)

 

【やること】

 ・「雇用保険被保険者証」の有無を確認

・会社が発行する「離職証明書」の内容確認とサイン(退職理由を要確認)

・会社が離職証明書をハローワークへ提出(離職日翌日より10日以内)

・ハローワークが「離職票」を会社へ発行。会社から本人へ。

 

ステップ②:ハローワークへ失業手当の申請等に行く(平日8時30分~17時15分)

 

【申請でやること】

 ・求職の申し込み

・「離職票」の提出

・当日の持参物(離職票、マイナンバーカード、運転免許証など、写真、印鑑、本人名義の通帳)

 

ステップ③:ハローワークの雇用保険受給者説明会に参加する

指定された日にハローワークで説明会を受講します。

参加すると、受給に必要な「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取り、第1回目の「失業認定日」が知らされます。

 

ステップ④:失業認定日にハローワークへ求職活動の報告をする

4週間に一度の失業認定日にハローワークへ行き、求職活動をしていることの報告(失業認定申告書に求職活動の状況記入)と、雇用保険受給資格者証の提出をすれば、失業認定を受けることができます。

 

【求職活動の定義】

・求人への応募

・ハローワークが行う、職業相談、職業紹介やセミナーを受ける

・民間の職業紹介機関等が行う、職業相談、職業紹介やセミナーを受ける

・公的機関等が行う、職業相談、セミナーを受ける

・再就職に資する各種国家試験、検定等の資格試験を受験する

以上の活動が4週間の中で2回以上必要です。

 

ステップ⑤:失業給付を受ける

失業認定を受けてから5営業日後、指定口座に失業手当が振り込まれます

 

 

失業給付はいくらもらえる?

失業給付がいくらもらえるのかは非常にポイントです。給付金額の目安と受給可能な日数をお伝えします。

 

失業給付は、雇用保険の支払期間と年齢、過去半年間にもらった給料によって決まります。

 

失業給付=賃金日額×給付率

・賃金日額=(賞与除く・手当を含む)過去半年間の給料÷180日

・給付率

失業給付の給付率失業給付の給付率

 

 

休業手当との比較

ロイヤルリムジンの記事の中で、「休ませて休業手当を支払うより解雇して雇用保険の失業給付を受けたほうがいいと判断」との内容がありました。

 

本当にそうでしょうか?

失業給付と休業手当を比較してみます。

 

【休業手当とは】

会社の責任で社員を休業させた場合に、該当の社員に対して支給する手当のこと

過去3ヶ月に支払われた賃金総額を、その期間の総日数によって計算

 

ケース:Aさん47歳(過去6ヶ月の給与が30万円/月、勤務年数20年)

 

会社都合による失業給付

・賃金日額:30万円×6ヶ月÷180日=10,000円

・失業給付(日):5,954円

 

会社指示による休業手当

・平均賃金(日):30万円×3ヶ月÷90日=10,000円

・休業手当:10,000円×60%=6,000円

 

この計算例でも分かるように、単純な金額比較なら、「失業給付の方がトク」という同社の発表は正解とは言い難いです。

ただし、賃金日額が5,000円を下回る場合(月給15万円以下)は、確かに失業給付の方が高くなりますが、どうなんでしょう。稀なケースですね。

 

一方、「想定を超えるスピードで売り上げが悪化していて、これ以上従業員の給料が下がれば解雇した際の失業給付も減ってしまう」というのは、確かにその通りですが、これは失業給付でも休業手当でも同じこと。失業給付だけが減ってしまうというのは間違いです。

ただし、次の給付期間については、ロイヤルリムジンが言っていることは一理あります。

 

 

失業給付はいつまでもらえるのか?

失業給付は失業認定を受けている限り、つまり失業状態にある限り、給付を受けられます。

ただし、給付日数に上限があり最長で1年間です。

 

会社都合の場合

失業給付の給付日数(会社都合)

 

自己都合の場合

失業給付の給付日数(自己都合)

 

こちらの外部サイトで自動シミュレーションしてくれますのでご参考に。

https://www.hwiroha.com/sitsugyou_kyuufu_keisan.html

 

会社都合と自己都合では給付日数に大きな違いがあります。予期せぬ退職は、再就職まで準備期間が必要ということでしょうか。

今回のロイヤルリムジンの事例のように、一斉解雇による退職の場合、最長330日の支給を受けることができます。

ロイヤルリムジンがコメントした「休ませて休業手当を支払うより解雇して雇用保険の失業給付を受けたほうがいいと判断」というのも、あながち間違いとは言えません。

 

 

ロイヤルリムジンの事例は不正受給に当たらないか?

本来は、失業給付を受けられないにもかかわらず、虚偽の申告により支給を受けようとした場合、不正受給として、それ以後の支給がすべて停止されます。

 

・求職活動をしていないのに、失業認定申告書に虚偽の報告をする

・アルバイト、日雇、あるいは自営をしているのに、その事実を申告していない

・内職や手伝いをした事実や収入を隠したり、ウソの報告をする

これらは不正受給とみなされ支給停止です。

 

今回のロイヤルリムジンの事例、私が引っかかるのは、「感染拡大の影響が終息すれば再雇用したい」との会社側のコメントです。

失業給付を受ける場合、就職活動をする事が必要ですが、再雇用を約束されている人が、本当に真面目に就職活動するのか疑問です。

再雇用の約束が労使で交わされていれば、失業給付の不正受給にあたる可能性は大きいでしょうし、約束まではしていないというなら大丈夫との判断でしょうか。

といいましても、グレーな部分が残ります。

 

 

コロナウイルスによる緊急事態宣言中の特例措置

現時点(令和2年5月3日)で、失業給付に関する特例措置で目立ったものは出てきていません。

ハローワークに訪問して行う手続きが、郵送可能となったくらいです。

この非常事態の中、私たちの生活を守るためにも、本質的な対策が必要です。雇用調整助成金もそうですが、企業に入る助成金でなく、社員に直接入る手当についても、厚生労働省には何かと頑張って欲しいですね。

 

(令和2年5月9日追記)

5月8日の時事通信のニュースによりますと、政府は新型コロナウイルスの感染拡大で休業している労働者に対して、失業手当を支給する特例措置の検討を始めたようです。

東日本大震災の際に、労働者が離職していなくても「みなし失業」として支給した特例措置と同様の制度になりそうです。

今後の動きを注視していきたいと思います。

 

 

その他の給付

失業給付以外に受給できる2種類の給付があります。

 

就職促進給付

失業給付を受けている間に再就職が決まった場合、再就職手当が給付されます。

早く決まるほど給付率が上がり、就職活動のモチベーションになります。

・基本手当の支給残日数が2/3以上ある場合:基本手当の残日数の70%の金額

・基本手当の支給残日数が1/3以上ある場合:基本手当の残日数の60%の金額

詳しくは厚生労働省のHPでご確認ください。

 

教育訓練給付

雇用保険の支払い期間が3年以上の場合、再就職のために厚生労働大臣が指定する講座を受講すれば、教育訓練給付金が受給できます。

講座の対象は資格取得や専門スキルに関する講座まで幅広いです。

訓練には一般教育訓練と専門教育訓練があり、一般訓練の場合は10万円、専門訓練の場合は1年40万円が上限です。

 

 

(参照)厚生労働省ハローワークHP

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_guide.html