この記事は、介護業界へ初めて転職を考えている方にむけ、未経験者にも分かるように介護サービスの解説と、皆さんの好みやスタイルにあったサービスを紹介しています。
この記事を書く私は、コンサルタントとして20年のキャリア、その後、事業会社で役員として、いまは介護部門を統括しています。
それでは、さっそくですが解説していきましょう。
介護サービスの3分類
介護サービスは、大きく
・居宅サービス
・入居型施設
・通所型施設
の3つに分類されます。
居宅サービス
自宅で暮らす要介護者を訪問して、買い物や掃除などの生活支援、食事や排せつなどの介護、健康管理や衛生管理指導などの看護、リハビリ・入浴などを提供するサービスです。
「訪問介護」などが居宅サービスにあたります。
入居型施設
老人ホームなどの入居型施設は、「民間によって運営されている施設」か「公的な施設」に分かれます。
そこから更に、入居する人の介護度や認知症の有無などによってさまざまなタイプの施設に細分化され、業界関係者でも全てを理解できないくらいに種類が多いです。
通所型施設
通所サービスは、自宅で暮らす要介護者が施設へ通い、日中を過ごしてもらい、介護や看護、リハビリなどを提供するサービスです。「デイサービス」などが通所サービスにあたります。
この後は、サービス毎に代表的なものを紹介します。
今回は、介護業界へ初めて転職される方を対象にしているので、看護師や理学療法士などの資格が必要な仕事は割愛しています。
訪問サービスの代表的なもの
訪問介護
利用者の自宅に訪問して行うサービスです。基本的には、1人で要介護者宅を訪問します。主な仕事は3つ
・身体介護・・・排せつ、着替え介助、入浴など、要介護者の身体に直接触れて行うサービスです
・生活援助・・・掃除、洗濯、調理、買い物などの家事の援助や、薬の受け取りなど、要介護者の身体に触れない範囲の身の回りの世話です
・通院などのための乗車・降車の介助
訪問介護の仕事は無資格では出来ません。最低でも介護職員初任者研修の受講が必要です。
とはいえ、この研修を自費で受講するのは家計の負担が大。したがって、費用を会社負担で受講させてくれる求人募集を探します。
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また、介護派遣会社のニッソーネットでも、自社が運営する研修施設で資格取得が無料で出来ます。詳しくは、下の記事をご覧ください。

訪問入浴
訪問入浴は、自宅のお風呂で入浴が困難な要介護者を特別な車両を運転して訪問、専用の簡易浴槽を持ち込んで行う入浴サービスです。
訪問は、介護スタッフ2人と看護師1人の3人体制で家庭を訪問。
入浴に特化したサービスのため、訪問介護で行うような、生活援助や通院の介助は行いません。車の運転や入浴機器の設置など、一般的な介護の仕事とは違う特有な仕事があります。
介護スタッフのどちらかひとりは、介護資格がなくてもOKです。
福祉用具貸与
利用者に、車椅子や特殊ベッドなどの福祉用具をレンタルするサービスです。
具体的には、地域のケアマネジャーから紹介を受け、介護を必要とする利用者宅を訪問、要介護者の状態や要望と自宅の環境を確認し、適切な福祉用具を提案、配送・設置、アフターメンテナンスを行う仕事です。
仕事上、車の運転免許は必要ですが、それ以外に資格は求められません。(福祉用具専門相談員という資格は一応あります)
入居型施設の代表的なもの

特別養護老人ホーム(特養)
公的な施設の代表的なものである、特別養護老人ホームは「要介護3以上」の認定を受けた方が対象の施設。費用も安く、終の棲家として人気の施設、待機者が多くなかなか入居できないです。
入居者は寝たきりの方が多く、食事介助、排せつ介助、入浴介助などの身体介助が仕事の中心となるため、介護資格が必要です。ただし生活援助(部屋を整えることなど)は無資格でも可能なため、「介護補助」や「介護助手」のような名称で募集されます。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは、介護や生活支援にはじまり、様々なサービスが施設の中で完結する、オールインクルードのサービスです。「月々、サービス定額」が利用者にとっては使い易く人気です。
余談ですが、M&A界隈でも介護付き有料老人ホームは人気で、買い手が付きやすいです。そういう意味では、経営的には安心して転職できる施設が多いでしょう。
介護付き有料老人ホームは、主に民間企業が運営し入居費用や初期費用も、相対的には高いので、接遇マナーや、きめの細かいケアなど、相応のサービスが求められる傾向にあります。
特養と違い、入居条件がないので元気な高齢者もいて、レクリエーションや外出イベント、サークル活動など、介護以外のサポートも出て来そうです。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、介護施設ではなく、あくまで住宅として扱われる、高齢者の住まいです。
外出や外泊できるケースも多く、自由度の高い生活を送れる点が、入居者にとってのメリットです。
基本的なサービスは、生活相談や見守り、食事提供、コンシェルジュサービスです。
介護保険サービスは、利用者が別途外部のサービス会社と契約します。サ高住のケアスタッフは、介護は行わず、外部の訪問介護事業所やデイサービスが担当します。
しかし、外部の事業所がサ高住と同じ法人の系列で、同じ建物内にある場合、職員が2つの事業所を兼務、実質は介護サービスを提供しているケースが、よく見られます。
サ高住の場合、転職する事業所により、大きく仕事内容が変わります。
認知症型グループホーム
グループホームは、認知症の方が5人から9人程度の少人数でグループをつくり、家庭のようなこぢんまりとした環境の中で、専門職員からサポートを受けながら共同生活をする施設です。入居者ができること、できないことに応じて、洗濯や料理などの役割を担います。
入居者に対して介護職員が、3:1の割合で配置が必要です。
食事介助、排せつ介助、入浴介助などから、更衣や口腔ケア、清拭、部屋を整えることなどが主な仕事です。また利用者といっしょに家事をし、外出をする機会も出て来ます。
精神疾患を持つ人や、行動が特に活発な人、色んなタイプの方がいるので、コミュニケーション力が問われます。

通所型施設の代表的なもの
デイサービス
自宅で暮らす利用者が、昼間の時間を過ごす場所がデイサービスです。
夜勤はなく、朝の迎えから夕方の送りまでのサービスを提供します。
デイサービス内では食事や排せつの介助のほか、入浴設備がある場合は、入浴介助も行います。決められた時間のなかで、食事や入浴のほかレクリエーションも行いますので、テンポよく仕事をし、安全に配慮する必要があります。
デイサービスは無資格者でも勤務できますが、身体介護には資格者が必要なのは、他のサービスと同様です。
お泊りデイサービス
デイサービスの中には、利用者がそのまま宿泊できる、「お泊りデイサービス」を実施しているところもあります。介護保険の適用ではないため利用者は、全額を自費で負担してサービスを利用します。スタッフには夜勤があります。
お泊りデイサービスや、前に紹介したグループホームなど、一般の民家を利用してサービスを提供している事業者が多いです。
以前は基準が曖昧だったこともあり、施設に防災の意識が低く、凄惨な火災事故がありました。その反省を踏まえて、人員、設備、運営の基準は厳しくなりましたが、昔から運営されているような事業者は、いまだグレーな部分は残っています。
通所リハビリテーション
デイサービスと同じく通所型のサービスですが、機能訓練を介護保険で受けることのできるサービスです。
2時間、3時間などの短時間利用から、リハビリだけでなく、入浴や食事を実施している事業者もあります。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、医師などがリハビリを行い、介護職員はデイサービスと同様の介護の仕事をします。
ニーズ別、あなたにあった介護施設は?
土日は休みたい
要介護者を預かる介護サービスで土日休みはハードルが高いですが、福祉用具貸与の会社は基本的に土日が休みです。
またデイサービスは事業所により違いますが、土日休みの所も多くあります。
通所リハビリテーションは病院やクリニックに併設されている所が多いので、病院と同じく月曜から土曜までの営業が多いようです。
入居系の介護施設には、土日は関係ありません。

夜勤したくない
こちらも入居系の施設となると原則、夜勤があります。
グループホームやお泊りデイサービスも。意外にも訪問介護も夜勤のシフトがあったりするので注意が必要です。
結果、夜勤のない施設は、通所系のデイサービスや通所リハビリテーションなどになります。
しかし、基本的に入居系施設には夜勤はありますが、日勤だけの勤務や短時間のパート勤務、逆に夜勤のみの勤務形態などを設けて募集している施設もあるので、老人ホームに勤めたからといって必ず夜勤があるとは限りません。
一方で、日中の仕事とは別に、副業で夜勤専門の派遣社員として働く人もいます。
そのあたりは、こちらの記事で詳しく書いています。

家から近い職場で働きたい
どこに住んでいるかにより一概には言えませんが、「施設の数が多い=家の近くにある可能性が高い」とすれば、訪問介護とデイサービスが、自宅から自転車やバイクで通えるような、通勤ストレスなく働ける職場になるでしょう。
特に訪問介護の場合、スマートフォンなどの業務システムを使って、直行直帰の勤務形態をとる事業者も出てきており、こうなると全く事務所へ通勤する必要がなくなってきます。
介護する利用者の要介護度が高い
終の棲家と呼ばれる特別養護老人ホーム、介護サービスがオールインワンで提供できる介護付き有料老人ホームの介護度が最も高いです。
逆に、サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームは介護度が低く、自らの力で外出や外泊ができる高齢者も入居しています。
しかし最近では、特別養護老人ホームの待機者が、一時的にサービス付き高齢者住宅に入居するなど、他の施設の介護度も上がってきています。
老人ホーム検索サイト「みんなの介護」に、それぞれの老人ホームの特徴が、分かりやすくまとまっていたので、こちらも参考にしてください。

(画像出典:みんなの介護)
介護以外の事に気を使いたくない
これも一概に言える話ではありませんが、特別養護老人ホームは、良くも悪くも公的な施設であり、利用者にとっては民間事業者のようなホスピタリティやサービスは期待できないですし、働く側から言えば、そういう事は気にせず、純粋に介護に集中する仕事環境です。
逆に、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームは、入居自体に高額なお金がかかるサービスですので、入居者も相応のサービスやホスピタリティを求めてくるのが普通の考え方です。
経営が安定している
特別養護老人ホームには施設建設に補助金が出たり、法人税などの優遇を受けられたりするため費用は格安。施設を運営する母体は、社会福祉法人や医療法人などの地元の有力者に限られ、政治の匂いがプンプンしますが、経営は安定しています。
以前はお金を儲けすぎとの批判もありましたが、最近は特別養護老人ホームでも経営が厳しい所も現れており、こちらも一概には言えません。
一方で、地域密着、小規模でやっているデイサービスや訪問介護事業は、国からの支援も手厚くなく、また家族経営から脱却していない所もあるので、総じて経営は厳しく、毎年、多くのデイサービスや訪問介護事業が倒産や廃業しています。
今回のような視点で求人を探すには?
私は、介護業界の転職は、転職エージェントや派遣でなく、転職サイトを使って、自分の考えや希望に合う施設を見つけ、自分で応募することをお薦めしています。
そのあたりは、こちらの記事に理由も含めて詳しく書いています。
また、オススメの転職サイト3つと、その理由も書いています。こちらも参考どうぞ。

今日はここまで。お付き合いいただきありがとうございました。