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M&A上場企業3社を比較 年収から仕事内容まで

この記事では、M&A業界への転職や就職を目指す方に、M&A仲介で上場している3社を徹底比較。年収から仕事内容まで解説しています。

紹介する3社はいずれもM&A専業企業として高い実績を誇る会社、それぞれに特徴があります。

今回は上場企業の公開情報をもとに記事を書きましたが、非公開のM&A企業を研究するにも役立つ内容です。

私自身はコンサルタントとして20年のキャリア、今回のうちの1社とは仕事上で長い付き合いがありましたので、単なるデータ分析にとどまらない話もかけるかも。

それでは早速、進めて参りましょう。

 

M&A上場企業3

今回、ご紹介しているのは

・日本M&Aセンター

・M&Aキャピタルパートナーズ

・ストライク

の3社です。

3社以外にも上場会社はありますが、M&A以外の主要部門で多くを稼いでいるので、今回の対象から外しています。

 

日本M&Aセンター

日本M&Aセンターは1991年に会計士や税理士が中心となって設立、3社の中で最も業歴の長い企業です。

 

M&Aアドバイザー(コンサルタント)が200名以上いる業界最大手企業で、M&Aの案件数が非常に多いのが特徴。業種や規模、地域を問わず、常に大量の案件を保有していますが、基本的には中小オーナー企業の売却に強みを発揮します。

 

国内7拠点に加え、シンガポール、インドネシア、ベトナムに拠点があり、アジア全域でM&Aを展開しています。

 

M&Aキャピタルパートナーズ

M&Aキャピタルパートナーズは2005年の設立。完全成功報酬の料金体系を取っているため、売り手も買い手も気軽に相談できる所が特徴です。

 

こちら中堅中小企業のM&Aに強みを持ちますが、拠点は東京のみ、案件は首都圏中心になります。また薬局のM&Aが得意分野のようです。

 

ストライク

公認会計士による設立が1997年。マザーズに上場したのが2016年と新しい会社です。国内だけで7箇所の拠点があります。

 

日本のM&Aマッチングサイトの元祖といえる「M&A市場SMART」により、インターネットによるM&A成約が多いのも特徴です。

 

M&A上場3社の決算状況

日本M&Aセンター

日本M&Aセンターの5ヵ年の業績財務ハイライトがこちらです。(単位:百万円)

あとで見る他2社と比較して売上規模は頭一つ抜けた存在です。

日本M&Aセンターは買い手と売り手の両方から仲介手数料を受け取るビジネスモデルです。業界内には片側からのみ手数料を貰う方式もありますが、単純に言えば、1件のM&A成約で2倍の売上が立つ仕組みとなっています。

 

この方式は、利益相反が生じやすい「双方代理」になるため好ましくないという考え方もありますが、片方の代理であろうが、双方の代理であろうが固定費は、さほど変わらないため、収益性という点では魅力的なビジネスモデルです。

この5年間で売上や利益が倍以上に成長していることも、グラフから分かります。

中小企業のオーナー経営者の高齢化と共に、後継者の問題が出てきて、それと共に中小企業の事業承継の手法としてM&Aが認知されてきた事もあり、一気に市場が拡大成長した結果です。

M&Aキャピタルパートナーズ

売上規模では日本M&Aセンターの半分に満たない規模ですが、この5年間で売上や利益で4倍以上の成長を見せています。

 

M&Aキャピタルパートナーズも、日本M&Aセンターと同様に双方代理となって仲介を行いますので、売り手と買い手両方から手数料を受け取ります。

したがって、売上に対する経常利益の比率が40~50%と、小売業などの他業種では考えられない高収益です。

 

ストライク

ストライクも5年で3倍近くの成長を遂げました。

ストライクの財務内容の特徴は、資産27億円のうち現金預金が23億円(87.5%)を占めていること。

会社資産のほとんどが現金ということで、不況により売上が低迷しても資金繰りの影響は受けにくい財務体質です。

経営の安全面では利点がありますが、逆に、そのお金を将来の事業に投資すれば?と株主の声も聞こえてきそうです。

 

M&A上場3社の年収比較

上場企業の有価証券報告書には、給与データがそれぞれ公開されているので抜粋します。(2019年度)

社員数 平均年収 平均年齢 勤続年数
日本M&Aセンター 415名 1414万円 35.1歳 3.8年
M&Aキャピタルパートナーズ 98名 3109万円 31.2歳 3.15年
ストライク 119名 1344万円 34.8歳 2.3年

 

目に飛び込んでくるのは、それぞれ平均年収の高さですね。

特にM&Aキャピタルパートナーズは3000万円超、これは全上場企業年収の中でも1位にランクされています。(2019年)

 

また年収と同時に、平均勤続年数も3社ともに2~3年と、新しい人材が多く入っていることも踏まえても、この数字は驚きです。

5年のうちに、ほぼ社員全員が入れ替わっているイメージです。

 

このあたりは、こちらの関連記事にも書いていますので、詳しくはどうぞ。

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では、なぜこれほどまでに年収が高いのか、勤続年数の短さも気になりますが、入社すれば、どのような仕事環境が待ち受けているのか、次に書いていきます。

 

M&A上場3社の仕事比較

なぜこれほどまでに年収が高いのか?

答えは儲かっていることに他なりませんが、もう一歩踏み込んでいえば「生産性が非常に高い」という事ができます。

 

メーカーや製造業なら設備や技術力で生産性が決まりますが、在庫や設備を持たないM&A仲介会社の場合、M&Aコンサルタントは時間労働者、生産性は社員一人ひとりが「どれくらい猛烈に仕事をするか」で決まります。

この生産性を測定する指標に、「社員1人当たりの売上」があるので、3社を見て参りましょう。

 

売上高 社員数 生産性(売上高÷社員数)
日本M&Aセンター 284億円 415名 6800万円
M&Aキャピタルパートナーズ 126億円 98名 1億2800万円
ストライク 50億円 119名 4200万円

 

東証一部上場企業の平均で2000万円程度。最も低いストライクでも、平均の2倍以上は稼いでいます。ましてM&Aキャピタルパートナーズにいたっては6倍以上です。

 

この生産性が大切なのは、ここから一人ひとりの年収が決まるということ。

・日本M&Aセンターは6800万円の中から社員に1414万円を分配している

・M&Aキャピタルパートナーズは1億2800万円の中から社員に3109万円を分配している

・ストライクは、4200万円の中から社員に1344万円を分配している

ことになるのです。

こうしてみると、ストライクも多く分配していることが分かりますね。

 

この生産性を決めるのは、コンサルタント1人ひとりの仕事ぶりと仕事の単価です。

それぞれの会社が、1案件でどれくらいの仲介料を貰っているのか、次にみましょう。

 

売上高 M&A件数 1件当たり単価
日本M&Aセンター 284億円 385件 7400万円
M&Aキャピタルパートナーズ 126億円 125件 1億円
ストライク 50億円 104件 4800万円

 

こうしてみると、M&Aキャピタルパートナーズの報酬単価が最も高く、ストライクの2倍になっていることが分かります。

同じM&Aで、なぜこれほどまでに単価が変わるのか、それは各社の料金体系(手数料率)と仲介する企業の規模による所が大きいです。

 

譲渡企業の時価総資産額 日本M&Aセンター M&Aキャピタルパートナーズ ストライク
5億円以下の部分 5% 5% 非公開
5~10億円部分 4% 4%
10~50億円部分 3% 3%
50~100億円部分 2% 2%
100億円~部分 1% 1%

 

【計算方法】

譲渡企業の時価総額が10億円のM&Aの場合

・売り手企業 5億円×5%+5億円×4%=4500万円

・買い手企業 5億円×5%+5億円×4%=4500万円

合計                 9000万円

 

が両社が得る手数料(売上)です。日本M&Aセンターは、これとは別に数百万円程度の着手金を取ります。ストライクの場合、手数料については非公開ですが、手数料率で他と大きく違うことは考えにくいので、同じような感じではないかと思います。

 

そうすると、M&Aキャピタルパートナーズが最も規模の大きな企業のM&Aを手掛け、次に日本M&Aセンター、ストライクは両社と比較して、かなり規模の小さな企業のM&Aを取り扱っていることが分かります。

 

最後にM&Aアドバイザー(M&Aコンサルタント)1人当たりの仕事量についてです。

 

仲介件数 直接部門の人数 1人当たり件数
日本M&Aセンター 385件 380人 1.01件
M&Aキャピタルパートナーズ 125件 80人 1.56件
ストライク 104件 98人 1.06件

 

企画部門やアシスタントも含まれるため、直接部門人数=M&Aコンサルタント数とはなりません。各社各様の役割分担があるので単純な比較は難しいですが、どうやらM&Aキャピタルパートナーズのコンサルタントの担当件数は、他2社と比べて1.5倍くらい多いようです。

ここまでまとめます。

・日本M&Aセンターが業界最大手。地域・規模・業種に関係なく仲介している

・平均年収はM&Aキャピタルパートナーズが最も高い

・M&Aキャピタルパートナーズのアドバイザーの生産性は高い

・M&Aキャピタルパートナーズは仲介する企業の規模が大きい

・M&Aキャピタルパートナーズのアドバイザーは担当する件数が多い

・ストライクは仲介する企業の規模が小さい

以上のようになるでしょうか。

 

日本M&Aセンターについては、こちらに詳しく解説しています。

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(補足)M&A兼業会社も

メイン事業部門が別にありつつ、M&A部門もあり、かつ上場している企業もあります。

例えば、ブティックスは介護関連の展示会運営をコア事業としつつ、中小の介護施設のM&Aを手掛けています。

エムスリーは国内の医師90%以上が会員となっている医療プラットフォームを活かして、M&A事業に参入しています。M&A専業の上場3社もエムスリーのネットワークは脅威なのではないでしょうか。

 

これら企業の特徴としては、主要部門と関連性の高い、業種特化型のM&Aをおこなっている点。

ブティックスでいえば、介護事業所のM&Aであり、エムスリーは病院のM&Aをしています。

兼業M&A会社の場合、他部門との兼ね合いで、横並びの年収になることが多く、仕事のハードさと比べて年収が低い傾向にあります。

ちなみにブティックスの平均年収535万円、エムスリーは822万円。エムスリーの平均年収は上場企業平均(630万円)よりは高めですが、それでも専業3社と比較すると見劣りするとしか言えないですね。

どちらもハードさには変わりないので、M&Aコンサルタントになりたいなら、まずは専業を狙う事でしょうか。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。